学園祭-前半-(20)
□佐助×幸村
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「ねぇねぇ真田センセ」
「なんだ、佐助」
「センセーって彼氏居る?」
「はっ!!?」
テキパキと机の中に物を詰め込んでいた幸村が、背後で作業をしている佐助を振り返る。
「お、俺は男だっ!
見て分からんのかお前はっ」
(あらら、顔真っ赤にしちゃって…どこまで俺様を本気にするつもり?)
茹で上がったばかりの蛸のように湯気まで立たせてしまいそうな、そんな顔で睨まれても怖くない。ホント童顔だねって言ったらもっと怒るだろうか。
「居るの居ないの、答えて」
「居るか馬鹿者!!」
「じゃあ彼女は?」
「かの…?
はっ…破廉恥である―――!!」
握った拳に精一杯の力を込めて、幸村は腹の底から叫んだ。間近でそれを聞いてしまった佐助はキーンと耳鳴りがするのを堪え、大噴火した教師を見上げた。
(センセーってまさか…)
そのまさか。
Yes,I'm cherry!!
とバラしているのも同然。
さすがに25だと聞けば、そのくらいの経験はあるだろうと思っていたのだが。どうやらそれは憶測に過ぎなかったようだ。
彼氏の方が可愛い顔してる、なんて思われるのがイヤで言い寄る女が居なかったか。たまたま機会が無かっただけか…そういう事に興味が無いのか。
「した事無いんだねぇ…」
「どうしてそういう話になるっ」
へーはーふーんとニヤけた笑みで立ち上がると、今度は幸村が佐助を見上げる番になる。
佐助好みの愛らしい顔、細い身体つき。加えて未熟の果実とくれば黙っちゃいられない。教師相手に、というスリルもより興奮を煽る。
「…興味が無いわけじゃないんでしょ?」
「きょ、興味!?ッ佐助!先生をからかうのもいい加減にしろっ!!」
ガッと掴まれた胸元を見、それでも佐助は余裕の笑みを浮かべる。細い手首を掴み、力ずくでこちらへ引き寄せた。
バランスを崩し倒れる身体を抱き込んで、じぃ…と穴が開くほどその童顔を堪能する。ぱちくりぱちくり、瞬きする度に揺れる長い睫毛。赤くなった頬と、それ以上に赤い唇。少し薄めのそれは手入れなんてしていないのか、少し乾燥しているようだった。