学園祭-前半-(20)
□政宗×幸村
3ページ/6ページ
「もうお腹一杯でござる〜」
ごちそうさま、と幸村は丁寧に手を合わせてお辞儀した。かちゃりと己の分の皿を重ねてキッチンへと運んでいく。適当にうるかしておけ、そう言えば分かったと返事をして、ダイニングへと戻った。
今夜の夕食に人参は入っていなかった(人参の買い置きが無い、と知ったときの小十郎の顔はとても悔しそうだった)。腹も満腹になったし、幸村としては有難い事この上ない。
だが。
暢気に食後の茶を啜る幸村の目の前では。
(No…メインディッシュがまだだぜ、幸村)
15の歳はサバ読みか、と思ってしまう程ギラギラした目で食事を続ける政宗が居た。
小十郎も帰宅させ、父も付き合いの食事で居ない今幸村と2人きり。最高のシチュエーションに胸が高鳴る。
「相変わらず、食べるの遅いでござるな」
「アンタが早食いなだけだ。よく噛まねぇと太るぜ?」
「むむ、そうなのか?」
それはこれから気をつけねばならんか、と自分の腹のあたりを擦る幸村を見て、政宗は面白そうに言った。
「丸々太っちまうと、そのうち狼さんに食われるぜ」
まぁ、太ってなくても即頂きだがな!と脳内で悪魔の尻尾を生やした政宗が高笑う。
その一方で天使の羽を生やした政宗が、
(いや…どうせならオレのもんで腹一杯にさせてぇな)
と天使の名に似つかわしくない言葉と顔で嘲笑った。
脳内は幸村を押し倒すことで一杯、最早性欲のかたまり。それは間違っちゃいねぇ、と政宗はとみに思う。
(オレはもう…子供じゃねぇんだ、幸村)
初めて、幸村を抱きたいと思ったのは中学一年の時だった。
年頃の子供としては早熟の、しかも男に興味を持ってしまったのだから相当な変わり者かもしれない。
しかし当時高校生の幸村は政宗よりも体格も良く、押し倒した所で張り飛ばされるのは確実。サッカー部エースの蹴りを食らったら生きて帰れそうにない。
早いところ幸村に見合う身体になれるようにと、あまり好きではない牛乳に手を出し突然筋トレなど始めたものだから、政宗の父と小十郎はさぞ不思議に思ったことだろう。
しかもその理由が、ただひとりの男を抱きたいが為になど。