学園祭-前半-(20)
□政宗×幸村
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「政宗君」
「なんだよ」
「付いてるでござるよ」
にゅっと伸びた幸村の手が、対面に座る政宗の顔に触れた。口角に付いていた食べカスを掬って、己の口に運ぶ。
その一部始終を半ば他人事のように見ていた政宗は、ハッと気付くと真っ赤な顔で俯いた。
(〜〜〜これじゃ、餓鬼扱いされたっておかしくねェ…!)
あまりの凡ミスに恥ずかしくなる。こういう事は、幸村にしてやりたい事ではなかったのか。
「どうかしたでござる?」
「(Shit!)…なんでもねぇよ」
突然黙ってしまった政宗を不思議に思ったのか、行儀悪くもテーブルに顎を載せた幸村がこくりと首を傾げた。そんなに見られちゃ、食うモンも食えねぇだろうが。言ってやりたい言葉を飲み込む。
「政宗君が食べ終わったら、皿洗いはおれがやるでござる」
「食洗器使えばいいだろ、そんなの」
「それでは一飯の恩義が果たせぬでござろう!!」
(そう来たか)
やたらと律儀な幸村の事だ、タダで帰ろうとは思っていないらしい。皿を洗ってもらえる分にはありがたい…が。
「皿洗いしなくていいから、ヤらせろ」
「や、や、殺るだと?政宗君はおれを殺す気かっ!!」
「ちげーよ、バカ…」
この鈍感っぷり、時にとても腹立たしい。
殺す気なんてねぇから、ちょっとこっちに来いと手招いてみせる。ああビックリした、と胸に手を当てながら席を立った幸村の先頭に立ってダイニングを出た。
「政宗君?」
食事の途中で…と窘める声にも構わずに、二階へと続く階段を上っていく。今、幸村はどんな顔で後ろを歩いているのだろう。いや、きっと怪訝そうにしているに違いない。
階段を上がりきってすぐ、右に折れる。ベランダに面した12畳ほどの部屋が政宗の自室。そこへ躊躇無く足を進める。幸村もここへは何度か入った事があったので、不思議に思いながらも政宗の後に続いた。