学園祭-前半-(20)

□政宗×幸村
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初めまして。



奴はそう言って、勝手に俺の手を握った。初対面の印象は、なんだこいつ女みてぇな顔して。目はデカいし髪は長いし、入ってきた学校間違えたんじゃねぇのかと思った。

実家の家業の為、入りたくもねぇ男子校に無理矢理詰め込まれ、しかも全寮制という最悪の環境。オイ、青春はいつすればいいんだ?しかもこの、入学早々相部屋になる奴はまるで世間知らずの女顔のお坊ちゃま。

ありえねぇ。こんなんじゃ何会話のネタにしていいか分かんねぇよ。

持ち込んだ荷物を整理し終え、やる事のなくなった俺はベッドの上で3年間も相方となる奴の姿をずっと観察していた。見ていた、じゃねぇ。観察が正しい。

一体何を持ってきたのか、俺の倍の数のダンボールから荷物を取り出してはせっせと作業に勤しんでいる。時折ジーパンのポケットから飴を取り出してころころと転がしていた。もうその時点で俺には理解不能。女ならともかく何で野郎のポケットから飴玉なんか出てくんだ。しかももう3つ目だ。

そしてそれを数えてしまっている俺自身にも腹が立つ。相容れないなら見なければいい、関わらなければいい。なのに目が離せない。このやたらとふわふわしてやがる雰囲気に呑まれちまったのか。どうもさっきからこの部屋の空気がおかしい。あいつか。あいつの所為か。ヘタクソな鼻歌をBGMに延々と片付けを続けている男の。


「おい、お前」

「お前ではないでござる」

「うるせぇよ。誰か分かってんならいいじゃねぇか」

俺の方を振り向きもしないで言い捨てる。テメェ、中々いい根性してんじゃねぇか。どうせ甘やかされて育ったワガママっ子なんだろう。こんな調子じゃ、上級生に目ェ付けられてボコられんのがオチじゃねぇか。それとも手慰みもんにされちまうか、どっちかだ。

「それがしは真田幸村。さっきも、自己紹介したでござろう?」

伊達殿、とようやく奴は振り返る。やっぱり何度見たって顔は変わんねぇ。っていうかさっきから何で俺、奴の顔ばっか気にしちまってんだよ。

 
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