学園祭-前半-(20)

□佐助×幸村
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「佐助なんか…ッ!」



これは、相当デカいのが来ると思った。そう思って佐助は身構えた。今日は何が飛んでくるのか。この間はこの家にたったひとつの花瓶が宙を舞った。その前は何を壊されたんだっけ…

ここ最近の恋人の荒れようは半端ではなく、度々言い合いになっては大喧嘩に発展することが多い。今も、佐助の目の前には真っ赤に目を腫らした恋人が、への字の口をして顔を歪めていた。

そんな顔しないでよ。可愛いけど、いつもより可愛くない。減らず口を叩けば多分ぶん殴られることだろう。

幾ばかりか猟奇的な恋人であるけれども、それは己に対する愛情の裏返しと見て取っている。恥ずかしがりの意地っ張り、そして極度の寂しがり。そんな事は百も承知でこの恋人と付き合いだして相当な年月が経つけれども、どうにも中身が成長していない。

今こんな事になっているのも、あまりに恋人が子供っぽい感情を持ち過ぎている所為だ。佐助はそう思っていた。斯く云う恋人はまた、違うことを思っているに相違ない。


「佐助なんか大ッ嫌いでござる!おれと、仕事のどっちが大事なのでござるか!!」

「あーもーいい加減にしてよ。ゴメンって言ってるじゃない」

明日土曜日は、一緒に外へ出掛けようと約束していた。普段は平日が休みの佐助は、高校生の恋人に合わせ土曜に有給休暇を無理矢理捻じ込んだのだ。

が、それも得意先の都合で敢え無く撃沈。急遽朝早くから出社することになってしまった。帰宅早々そう告げると、部屋で待っていた恋人は大層怒った結果がこれだ。まぁ、こうなる事は大方予想はついていたけれど。

「この我儘っ子。俺だって忙しいのよ?頑張ってるんだから少しは我慢し…」

「もういいでござる!」

「あ、ちょっ…!」

佐助の言葉を遮って、出て行こうとする。腕を掴むのも間に合わずに、佐助の横を通り抜けて玄関口から慌しく駆けて行ってしまった。

 
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