学園祭-前半-(20)
□佐助×幸村
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「いただきますでござるー!」
クラス一番の掛け声と共に、楽しい楽しい給食の時間が始まる。今日の献立は子供が大好きなカレーライス。
やはりそれが大好物である幸村は、ルゥとご飯の比率がまるでなってない程こんもりと盛った米をひと匙掬い、ルゥにつけて口に含んだ。噛み締めたとたん幸せそうに緩んでしまった顔を見て、いただきますの合図をしてもスプーンすら手に取らなかったクラスメイト達の鼻の下も一緒に伸びる。
「ん?食べないのでござるか?」
「「…いただきます」」
そう言って、幸村を囲む5人のクラスメイト達はようやく食べ始めた。仲の良い者同士で机を寄せ合い…これは別名幸村のお隣争奪戦とも言うが、それに見事勝利した佐助は左隣で同じくサラダに手を付ける。
シャリシャリとした触感はレタスだったか、視線は幸村の横顔に釘付けで忙しい。
「猿、お前見過ぎ」
「あんたもだろ、政宗」
幸村の右隣に陣取った政宗が、もくもくとカレーを頬張る生物を挟んで睨みつけてくる。
うざいんだよテメェ。
バチバチと火花が飛び交う。
幸村の対面で給食を食べている3人は、ああ…また始まったよと呆れながらも、三者同じくして視線は幸村にしか向いていない。特にこの、佐助と政宗の仲の悪さといったら尋常ではないもので、そこに飛び入ったら骨すら残らないような目に遭うだろう。
ならば、触らぬ鬼に祟りなし。弱冠14歳ながらも、早くも人生をうまく生き抜く知恵を持ったようだ。
「あれ?」
「どうしたの?」
「牛乳出ないでござる」
じゅううっ…と勢いよくストローを吸ってみるも、わずかな甘さしか舌に感じられない。食事をして血行がよくなったのか、いつもより赤い唇からストローがちゅぽんと出された。
どう考えても中身が出そうにない、噛み潰されたその先端。普段から結構な噛み癖がある幸村は、ガジガジと噛んではよくダメにする。
もう一回、と再び咥えて力強く吸った。しかし出ないものは出ないのだから仕方がない。