02/20の日記
21:11
政宗×幸村A
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「幸村はどうしている」
「随分と力を無くしてはおりますが、まだ大人しくなる様子ではございますまい」
「Huh…殊勝な事だ」
訊かずとも感じられる『気』で悟ることはできたが、あの場所からさっそく動き始めたようだ。
脱出を模索するか、それとも復讐を果たそうとするだろうか。だがあの傷付いた身体ではどちらも叶うまい。
簡単に手折れる者ではないと分かっている。だから楽しいのだ。あの気が強い眼差しがいつ、輝きを失い政宗に屈服するか…想像しただけでゾクゾクする。そう遠くはない未来を思い描き、政宗は乾いた唇を舐めた。
「……何処へ、政宗様」
「kittyのご機嫌伺いに行ってくるぜ…ああ見えて寂しがりでな」
ゆっくり立ち上がると、僅かな衣擦れの音を立てて闇の中に消えていく。
天使を陵辱し、手懐ける。
悪くない響きだ。
静かに歩みを進めながら、政宗は冷酷に笑った。
もうあの場所に未練はない。幸村が手中にあるのならば、天界だろうと地獄だろうと何処でも構わない。むしろ此処の方が居心地が良い…幸村を知る者が、あの男以外に居ないのだから。
(誰にも邪魔はさせねぇ)
感じる幸村の気が近い。活発に動いていたそれが一箇所に留まっている。
さては面白いものでも見つけたか…笑みを噛み殺しながら扉を開けると、鬱蒼と茂る樹林が政宗を出迎えた。ここへは考え事をしたい時、よく足を運んでいる。静かな空気はとても幸村に似つかわしくないが、さりとて他に息吐ける場所が見つからなかったのだろう。
「ここが気に入ったか?幸村」
「っ、ま…政宗殿…」
噴水から溢れる水に触れようとしていた幸村が、罰の悪そうな顔をしてその手を止める。
「自由に歩いていいとは言ったが、あまりここのモンに触るな…怪我したくなけりゃな」
見たところ普通にありふれた物であろうと、ここに『生きる』物はみな意思を持っている。
幸村のように物珍しい獲物が居れば放っておく筈が無いだろう、ほらその隙だらけの背後では、まさに絡み付こうとしていた蔓がその食指を引っ込めた。
「気に入ったっていうより、気に入られた方だなアンタは」
何処にも安心できる場所なんかねぇ…この腕の中に堕ちる以外に。
気丈にこちらを睨み付けてはいるが、背負う痛みは誤魔化せていない。気まぐれにまだ痛ぇんだろ?なんて訊ねてみれば、心底嫌そうな顔をして視線を逸らされた。ここで素直に痛いとでも言われてしまえば、興も覚めてしまうが。
つづく
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