07/17の日記

21:37
政幸N
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「…幸村ぁっ!!」

「うわ、わ…!何事でござるっ政宗殿!!」


政宗が部屋に入ってくるなり突然抱き締められ、槍の手入れをしていた幸村は危のうございまする!と唇を尖らせて怒ってみせた。


あの惨劇からひと月が経ち、回復の兆しを見せた幸村の見舞いにと言いながらも政宗はもう3日も甲斐に滞在している。

捕らえられた時に負った傷はだいぶ癒えたようで、まだ本調子とはいかぬが槍を振るえるまで元気になった。よく食べよく笑い、いつもの幸村が戻ってきたようだ。やはり、こうでなくてはと政宗は思う。

国政がままならぬからと床に伏した幸村を佐助に頼み、奥州へと戻っている間ずっと気になっていた。あれが目を覚ました時、松永の事を憶えているのか、と。

だが幸いにも、佐助の方便によって記憶が塗り替えられた。旦那はね、たくさんの敵と戦って、ボロボロになって倒れちゃったの。もう、俺様が駆けつけてなかったら危なかったんだからねと言い、竜の旦那も心配して来てくれたんだから、ちゃんと御礼言っておきなよと政宗の名を出すことでそれ以上の幸村の質問を遮ってみせた。

佐助だけなら兎も角政宗にも迷惑をかけたとあらば、こんな所で床に伏せっている場合ではあるまい…と即刻筆を取り礼の文を送った訳だが、多分それの返事が届くより前に政宗が来た、というかほぼ飛んできたに間違いない。血相を変えて、取るもの取らず飛んできた、そんな感じだった。

幸村、幸村と何度も確認するように名を呼ばれ、恥ずかしいような、こそばゆい思いをした。今もこうして、名を呼ばれては腕の中に招かれ、誰かに諌められるまでずっと抱き締めて離さない。


「んう〜〜…ま、政宗殿ぉ…」

「Ah?何か文句あンのかよ」

「も、文句はありませぬが、その…少し恥ずかしゅうござる」

なんだか前よりも、政宗が甘えてくる気がしてならない。甘えるというか、常に幸村を側に置きたがって離れようとしない。

その理由は、幸村だけが知らない事だ。知らなくてもいいと、政宗は目を伏せる。また、こうして穏やかな日々さえ戻ってきてくれるなら。

「幸村、もう俺の傍から離れないでくれよ?」

「?何でござるか急に…変な政宗殿でござるっ」

「変でも何でも構やしねぇよ。
アンタが…此処に居てくれるならな」

アンタが居ないと思うほうが、よっぽど気が狂いそうだ。


腕の中で暴れる宝をきつく抱き締めながら、ただただ、取り戻した温もりを確かめていた。




 

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