07/14の日記

21:00
政幸K
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「ぐああぁッ!!」

「ッ、猿!何してやがる!!」

そちらに気を取られると、視界の端から炎を纏った切っ先が政宗の首を獲らんばかりに肉迫する。

顔を逸らす事で直撃は免れたが、じり…と残り火に焼かれ眼帯の紐が焼き落とされた。

「Shit…!」

残る刀鍔を毟り取って、乱暴に投げ捨てる。身形に構っている場合ではない。

後ろに反った体勢から右足を繰り出し、幸村の左手に握られた刀を蹴り上げた。腕が痺れたか柄から手が離れた隙を見て、身体を捻り景秀で打ち落とす。至近距離で視線が交錯し、政宗の隻眼は愛しい者の姿を鮮明に映し出した。


(………何だ…?)


幸村の瞳が僅かに揺れている。暗いばかりのそこに、生まれる雫。一筋の涙となって、血の気を無くした頬を滑り落ちた。

「ぁ…あ……っ?」

何かに怯えるように、ひとつ、ふたつと後ろによろめいた。見かねた久秀はゆらり立ち上がると、操り人形の糸を手繰り寄せるように幸村の痩躯を背後から抱き留める。

「…どうしたのかね幸村。手が止まっているではないか?私の言う事が訊けないのかね」

「ぅあ……っ…久秀さ、ま…を…邪魔する…っ」

「そうだ…良い子ならばできるだろう?」

ガタガタと手が震え、支えられていなければ立つ事さえままならないのだろう。視線は政宗の方を向いているが、映しているものはそうじゃない。

「幸村…」

自分自身と戦っている。葛藤している。縛られた意識を越えて、自我を呼び戻そうと。

まだ香炉は異臭を放ったまま、それなのに、何故…?

「………ぃ…」

「どうした?」

「…殺したく、ない……っ」

いやいやと幼子のように頭を振り、ついに刀を握ることさえできなくなった。



つづく
 

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