07/09の日記
20:57
政幸H
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奥州を経って4日…
漸く西国・大和へと辿り着いた政宗達は、ろくに休息も取らず駆け抜けてきただけに色濃い疲労の痕が浮かんでいた。
ただ、幸村をこの手に取り戻したいだけ一心に昼夜問わず山を越え、何頭もの馬を潰し、食い込んだ手綱に手のひらを擦り切られても、そんな些細な痛みなど今の政宗には感じられなかった。
幸村の温もりがここに無い…その現実の方が余程堪える。
「あの城か…」
「そうさ…あの中に旦那は捕らわれてる。気を付けた方がいい。松永配下の忍びは手錬が多い」
焦る気持ちは佐助も同じ。ここまでの道程がどれほど遠く感じられた事か。
幸村の消息を知って、一番に飛んで行きたかった。しかし、たった一人で乗り込んだところで一体何が出来る。これほど無力な己を恨んだ事はなかった。それに、幸村を見つけたい、助け出したいという気持ちを抱いていたのは自分だけではなかったから。
誰よりも、だなんて自分を差し置いて思うのは癪だけれど、恋仲である政宗がそう思わぬ筈が無い。慎ましやかに愛を育む2人を右目共々温かく見守ってきた、だからこそ、また幸せそうに笑う幸村が見たくて。
「…それにしても、変だ」
「気配が少ねぇな。感付かれたか?」
「罠って事も有り得る」
「罠……か。こっちが来る事分かってンなら、態々名乗る手間も省けるってもんだ」
早くも戦いの匂いを察知してか、静かに一振りの刀を抜く。政宗らしい返答に、少なからず安心感を覚えた。一国を束ねる頭だけあって冷静さは欠いていない。
「正面突破は嫌いじゃないぜ」
「…それじゃ、俺様も便乗させてもらいましょうかね」
政宗の駆る馬の先を跳躍し、目前に在った崖を一気に飛び降りた。ここまで行動が読まれているなら隠す必要は無い。ならこちらも遠慮はしないと、懐から取り出した炸裂弾の留め金を外した。
「食らいなァッ!!」
目標を違わず爆破し、下馬した政宗と共に薄気味悪い城内に侵入を果たした。
殺気を飛ばしても返ってくる気配は無い。城内はしん…と静まり返っている。
「どこまでシラを切るつもりだ、松永…!」
こちらの手勢はたったの2人、それを舐められているのか。それともまた、別の自信があるのか…どちらにせよ嫌な予感がする。細心の注意を払いながら、天守の方角へと向かった。
つづく
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