TOX2【長編】

□「おかえり」とか
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とりあえずあの奇跡的な程に非常識なルインには、今日のところは家から出ないように言っておいたのだが、家にいたところで問題がないわけではない


台所どころか風呂場すら初めて見たと言っていたため、昨日はそのまま寝かせたのだが、今日はさすがに入らせなければまずいだろう
一体今までどうやって生活していたんだ……


さっさと仕事を終わらせて帰るか
特に自宅に愛着などないが、さすがに燃やされたり水没させられるのは困る


「……つ長?リドウ副室長?」

「ん、何の用だ?」

「先ほどユリウス室長が探しておりましたとご報告に……」

「ユリウスが……?」


あいつが俺に用事なんて珍しい……普段は避けるようにしているくせに
おそらくルインのことだろうが


ふと、ルイン の言っていたことを思い出す
ユリウスが(一時的にとはいえ)引き取ろうとしたのは、俺から引き離そうと考えたからだろう

気持ちは分からないでもないし、はっきり言ってそれはそれで非常にありがたい話ではある


あるのだが……




「やぁ、ユリウス。用事があるって聞いたけど?」

「リドウ……!!」


今にも掴みかかってきそうな勢いだった
正直予想以上だ


「おいおい……何をそんなに怒ってるんだよ?まさか昨日のガキのことじゃないだろうな?」

「当然だろう!あんな子供に借金させて……どうやって返済させるつもりだ!」

「ガキでも稼ごうと思えば稼げるんだよ。ああいうのが好みだっていう輩もいるだろうし」

「ふざけたことを……!」


こうやってからかっているのも面白いが、生憎今日は早く帰らなければ自宅の危機なのだ
しかしここで食いかかってくるということは、まだルインを引き取ろうとしているということなのだろうか


「あの子をどこにやった……」

「俺んちだけど?」

「なっ……?!」


そんなに驚かれても別に連れ込んだわけじゃないし、むしろ乗り込まれたわけだから、困っているのは俺の方だ


「何もしてないだろうな……?」

「あのなぁ、昨日来たばっかりなんだぜ?何もしようがないだろ」

「……もう一度話がしたい、連れてきてくれ」


会いに行く、と言わないだけましか
だが……


「別に俺は構わないけど、言っても無駄だと思うぜ?」

「何?」

「何って……自分で言ってたんだろ?お前のとこの世話にならないって」

「それは遠慮して……」


そう、つまりあいつは遠慮を知らないわけじゃないのだ
知らないわけじゃないのにしない
……多少人を選んでる感はあるが


「ま、あれがお前のとこに行くっていうなら別に止めやしないけど?」


そうだ、ユリウスのもとに行かれて困るのは、この話をユリウスが知らなければという前提での話である

大方どこかからそれを聞いたのだろうが、それなら俺が引き取っておく必要はないのだ




「明日にでも連れてきてやるよ」




そう、必要は、ない
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