「いやぁ!!や…やめてぇええっ///」

じたばたと、自分の下で懸命にもがく女。



其の姿を見て心がチクリと痛んだ気がした薬師如来は自嘲気味に



「まるで強姦しているみたいだな‥‥」

と言って、苦笑いを浮かべる事しか出来無かった。





「離してくださいまし〜!!こんなの‥ひきょーですわよぉ///」
「卑怯、か……」



確かに、同意を得られない以上例え相手が婚約者であろうと妻であろうと強姦以外の何者でも無いのかもしれない。



しかし、夫婦生活をやんわりと拒否されても尚


相手を愛しているという理由だけで結婚を承諾出来る程薬師如来は甘くなかった。




「本当に卑怯なのは‥一体どちらの方だろうね??」
「ッ!!」
「そもそも誠実さを見せろ、と言いながら何故他の女を愛人にしても良い。という条件は何処か矛盾してないかい??」
「そ、それは…‥」
「第一、夜の営みを必要としないのなら結婚などしなくとも恋人や友人の関係で十分だろう??」



だが、私が求めているのは恋人としての君でも友人としての君でもなく『私の妻』という君なんだがね―――



そう言って、薬師如来は真っ直ぐ観世音だけを見詰めてみせた。




寝台の上に広がる豊かな黒髪。

其れは皮肉な事にも観世音の美しさを一層引き立たせてくれた。





「…‥愛しているよ、観世音君。君が嫌だと言っても私はこのまま抱かせて貰うがね」



さぁ、どうする??

と言わんばかりに薬師如来の口元が意地悪く歪んだ。




恐らく、本気に違いない。


そう観世音に確信を持たせる程、薬師如来の決意は固く。彼に掴まれていた手首が痛みを覚える程強く握り締められていたので





「わかり、ましたわぁ。薬師如来様の‥どーぞお好きになさってくださいまし〜」


どうせ何をしてももう逃げられないのだろう。


などと半ば投げ遣りになった観世音は潔く抵抗を諦めて静かに目を閉じるのだった―――







『あさきゆめみし ゑひもせす(浅はかな夢を追い求めたり酔いしれたりも、もうするまい)』






「‥夢みたいだよ、観世音君」
「んっ///」


冷たい外気が今、単衣も纏っていない観世音の身体をそっと撫でていった。



四季の無い仏界では特に暑い日も寒い日も存在しないのに、初めて他人に肌を晒す事に緊張しているのだろうか。

異様に火照った身体にじんわりと冷たい汗が滲んだ。





「ずっと君に触れたいと思っていた」

遠慮がちに伸びてくる、薬師如来の手。



やたら骨ばった其れは弥勒のモノよりゴツゴツしていて明らかに触り心地が悪そうだった。


其れでも、彼の体温は何故だか心地良く




「綺麗な肌だ‥」
「あ///」


指が触れた


たった其れだけの事でドクン。と大きく心臓が跳ねたのが自分でも分かった気がした。



だから




「い、いや‥///」


一度は承諾したとはいえ

其のリアルな感覚に観世音の緊張は更に高まり、戸惑いと恐怖で身体が勝手にカタカタと小刻みに震える始末。





どうしてこんな事になってしまったのか。

多少は覚悟していたがこんなにも早く処女を失う羽目になるなんて。




余りの急展開に混乱していた彼女はただただ怯える事しか出来なくて





「わ‥たし、はじめてなので〜…お手柔らかにしてくださいねぇ??」


どうせ逃げられないのだから、せめて痛い想いをするのだけは勘弁だと思って震える口で咄嗟にそんな事を言ってしまったのだ。


しかし―――






「あぁ、分かっているさ」
「ひあっ///」


そんな初々しい観世音のお願いに薬師如来の興奮は高まるばかりで。



顕(あらわ)になった滑らかな肌に手を添えては、そのまま撫でる様に何度も何度も擦ってやった。





其の度に



「ッ…‥///」

と息を詰まらせ、緊張でブルッと小さく震える観世音が無償に愛おしく




「‥可愛いな、観世音君は」
「なっ///」
「そんな可愛らしい反応をされると此方の理性と自制心が持たないよ」


今まで誰にも見せた事の無い、とても柔らかくて穏やかな笑みを自然と浮かべる事が出来た。




すると



「やっ、薬師如来様ッ///」


其の笑顔に不覚にもトキめいしてしまった観世音が抗議めいた声色で名前を呼んでくるから。



其れすらも愛おしく感じた薬師如来は、しっとりと濡れて来た彼女の秘部に顔を埋めてやったのだ。




くちゅり‥




「あぁんっ///」


酷く熱い、他人の舌で一番恥ずかしい所を嬲(なぶ)られる。


其れは処女であった観世音にとって初めての経験で、顔から火が出そうになる程羞恥心の伴う体験でもあった。





「いやぁああっ///やめてくださいましいぃいっ!!そんな、ところ‥汚いし、恥ずかしいですうぅううっ///」


しかし薬師如来の舌の動きが止まる気配は一向に無かった。



べろべろびちゃびちゃと、わざと唾液を垂らして厭らしい音が立つ様に舐めてくる。


其の厭らしく下品な水音に清楚で性行為に偏見を持っていた観世音が耐え切れず、いやいやと首を振って嫌がっても




「はぅううんっ///あぁ、ひっ!!だ、め‥で、す。やくし、にょらい‥さ、あぁんっ///」


下半身はしっかり感じているのか、ピンク色の可愛い花弁はヒクンヒクンと厭らしく蠢(うごめ)いていた。







「感じている癖に‥嫌がる振りをしても無駄だよ。観世音君」
「そんな‥!!わたしは〜演技してるつもりなんかぁ‥あひぃいいいんっ///」
「ハハハ、嘘吐きにはお仕置きだよ??」


其の上、口答えは許さないと言わんばかりにぷくっと勃起した小さな陰核を指でギュウッと摘まれる。



痛い位。

皮の上から思い切り。



なのに―――




「ふぁっ///や、薬師如来‥さまぁ!!もっと、やさしく‥あぅううっ///」
「痛い方が好きな癖に??」
「ち、が‥ひんっ///」



じんじんと、痛みとはまた違った不思議な感覚が観世音を襲う。




「じゃあ優しくしてあげようか」
「んんんっ///あぁ、いやぁああ!!」



皮をくりゅっと無理矢理剥かれて、そのまま舌でペロペロと舐められる。


そうされるだけで観世音の身体には電流が流れた様な甘い痺れがビリリと走って。




「はぁああああっ!!」


瞬間、下半身が生温かい感触に包まれるのが分かった。



其れが自分の尿だという事に気付かなかった観世音は




「あ‥…ぅ、…///」

と、小さく呻く事しか出来なかった。




だが―――





「……気持ち良かっただろう??」
「!!!!!」
「でも、本番はこれからだよ。観世音君」



直ぐに体を引き裂く様な鋭い痛みに襲われた観世音は




「あ゛あぁあああっ///」

と、悲鳴にも似た嬌声を上げてしまった。





「い、いたい‥…ですわぁっ///」

グググ、と狭い内部を押し広げるかの様に無理矢理侵入して来た薬師如来の逸物。



大きくて、其の上太くて長い其れは処女で、しかも華奢な身体の観世音には凶器にしか思えない。




しかも


「いや!!うごかないで…っ、くる‥し、あぁああっ!!」
「フフフ、どうやらこういう事は初めての様だね??」
「だ、だったらどうだって言うんですの〜??」




よりによって好きでも無い男のモノをギチギチに咥え込んでいる自分の女の部分が憎らしくて。


出来る事なら今直ぐ抜いて欲しかったのに




「嬉しいよ、観世音君」
「君の初めてを奪う事が出来た」
「たった其れだけの事が‥こんなにも嬉しいなんて」



感慨深く呟いた薬師如来が本当に


本当に嬉しそうに笑った其の瞬間






「ッ///」


どうしてか、観世音はドキッとさせられたのだ。





ほぼ初対面の筈なのに

自分には他に愛する男が居る筈なのに。



其れなのに―――






「愛してるよ、観世音君」

君は私のモノだ。




そう宣告された瞬間、観世音の瞳から自然と一滴の涙が零れ落ちていった。





「やくし‥にょらい、さま……」



其れが


好きでも無い男に無理矢理処女を奪われたせいなのか


其れとも愛する男へ操立て出来なかった自分に対する怒りなのか分からなかったけれど





「…‥‥わたしも、あなたを愛せる努力をします」



まるで後を追う様にポロポロと次々頬を伝って流れ落ちていく涙。


其れを止める術なんて観世音には分からなかったから






「ですから―――忘れさせてくださいませ〜あの人のことをぉ」



聞こえるか、聞こえないかくらいの本当に小さな声で呟いては

婚約者である男の首に腕を回すのだった。




そっと、静かに。


だけど愛しげに。

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