「それではそろそろ御暇するよ」
そう言ってロビンが腰を上げると、子分達は不満そうな表情を作った。
『え〜!』
「我儘言っていたら、もう来ないよ?」
『……やだ』
恐怖体験から庇ったことで、どうやら少し変な執着を見せる子分達にそう言うと、拗ねたように俯いた。
「明日の夜はまた僕の屋敷においで。美味しい料理を用意しているから」
食べモノの話題に二人のテンションが急上昇した。
『行く!!』
「昨日は見せてあげられなかったけれど猫や犬が沢山居る部屋があるから明日はそこに行けるようにしておくよ」
『ありがとう!残念変態公爵!』
とても嬉しそうにお礼を言う子ども達にロビンの笑顔が引きつる。
「……だからその呼び方はやめなさい」
「じゃぁ、俺もそろそろ」
「あっそうね。送るわ」
「ハニー、僕の時と対応凄く違うように感じるんだけれど?」
ケニーが立ち上がると、それを追うように立ちあがったジェネルに、ロビンから声がかかる。その不満たっぷりな言葉を気にもせずジェネルは歩きだした。
「気を付けて帰ってくださいね」
「ありがとう淑女。君もあまり気落ちしない約束、忘れないようにね?僕は怪我もなにもしていないのだから」
そう言ってその場でくるりと一周して見せて、優雅に礼をとる。
「はい」
「明日の夜、会う時に淑女が悲しい目だったら、申し訳なさ過ぎて土下座してしまうかもしれないよ?」
「ふふっ、それはとても大変です」
おどけて見せるロビンに少し笑うペティ。それを見てロビンは右手を彼女の頭に乗せて、優しく撫でた。するととても嬉しそうに笑った。それを見て、ジェネルの中で落ち着いたはずの罪悪感が首を持ち上げた。
「……ペティ、どうかしたのかい?」
少し陰る表情にケニーが気づいて声をかける。
「えっ、いいえ。何もないわ」
「さぁ、帰ろう」
そんな二人を横目に捉えて、明るくロビンが声を上げた。
「明日、約束だぞ!」
「約束ね!」
「ああ!約束を破ったら、親分の素敵な笑顔、だね?」
『勿論!』
三人の言葉にジェネルの表情が歪む。
「ちょっと、さっきの言葉はどう言う意味なの?」
「ふふっ、約束を破ったら親分の素敵な笑顔、です!」
楽しそうにそして幸せそうにペティは笑う。それに再び問いただそうとするジェネルに子分達と逃げ回る。やがてジェネルが疲れて鬼ごっこは終り、ロビン達は帰って行った。