アクセル・ソード・バースト
□Call
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俺、桐ヶ谷和人は今茨だらけの世界に居る、という表現は少し間違っているだろう。
何故なら視界を潰す程広がる茨はついさっきまで存在せず、俺もまた俺で有り俺で無いからだ。
その時、死角から放たれた弾丸が俺の右後方から貫こうとするのを感じた。
「うわっ!!」
周りを太い茨で囲まれ余り身動きが取れない中、とっさに俺は、俺のアバターは横に捻り弾をかわそうとする。
しかし弾丸の方が速く、俺のアバターの右肩を掠ってリアルな痛みが生じる。
それに合わせて俺の視界の左上の〔Dark・Swords〕(ダーク・ソーズ)という名前の付いた緑色のゲージが5%程減り、その下の青色のゲージが比較的多めに上昇した。
「おい!!」
「大丈夫だ!!」
茨に遮られ姿が見えない味方のアバターが心配して素早く声を掛けてきたが直ぐに平気だと答えた。
「にしても凄いなあのアバター。」
「ああ。掠りながらと言ってもアイツの狙撃全部かわしてるしな。」
不意に俺の近くに有るビルの屋上に居た2体のアバターの会話が聞こえた。
「でもあのアバターって珍しく無いか?」
「あぁ。普通のよりも明らかに人っぽいよな。まるで本人の型を取ってそれに合うように薄い装甲を付けた感じだもんな。」
その発言は全て俺のアバターに対して言っているみたいだが気にしてられない。
俺は敵〔Orange・Shooter〕(オレンジ・シューター)の狙撃に備える為に体の神経を集中させる。
そんな中頭の中では、こうなったきっかけを少し振り返っていた。
――――
その日は金曜で朝5時半頃、俺はゆっくりとベットから起きた。
「……今日行けば明日から休みか。」
寝ぼけながらそうぼやきベットから出て洗面所に行き顔を洗う。
そして部屋に戻り着替えた後パソコンを起動した。
そしてそのまま流れるようにメールボックスを開けると。
「ん?」
一通のメールが届いていた。
それだけなら特に疑問も問題も無いはずだが件名が[桐ヶ谷和人へ]と書いてあるだけで、メールアドレスも今まで見たことが無いのが引っかかったのだ。更にそのメールアドレスも殆どが文字化けしてるような状態なのも理由の一つだった。
「…………」
これを見て俺はしばらく思考に入った。
まずコレがウイルスメールで無いのは、つい先日ウイルスバスター系ソフトの最新版をアップロードしたため断言できる。
次に浮かぶのは勧誘メールの類いかもという疑いだが、こちらにも市販のソフトと自作のソフトを入れており、両方の壁を潜り抜ける事は出来ない。
そうなれば後はその意図だがそれだけは読まないと断言出来ない。
そうなるとやる事は一つ。
(…まずは中身を見るか。)
そう決めた俺は、手早くメールを開いた。
もしかしたらこの先、このメールを開いた事を後悔する事になるかもしれない―――
[もっと先に―――加速したくありませんか?黒の剣士キリトさん。
突然、このようなメールを送ってすみません。
今回このようなメールを送ったのは、一つ確認したい事が有るからです。
キリトさんは、再び真の意味で空を飛ぶ銀の烏と戦いたいと願いますか。
もし願うのでしたらこのメールの事を誰にも伝えず、午後八時にあなたが通っている学校の校門にきてください。
私、待ってますから。
Peach・Arrow(ピーチ・アロー)]
―――でも今はそんな事をする気は無いし、感謝もしている。こんな凄いゲームを教えてくれたんだから。