龍
□休日
1ページ/1ページ
「…ってことがあったんだけど、あー、俺ってほんと良い人だよねー」
「そーですね、はいどいて」
「なんか冷たくない?俺なんかした?」
さいきん、品田さんが家に来る頻度が増えた。
最初の頃は借金取りの来る時だけ逃げてきてたのに
ここのところ毎日居て、このまま住み着くんじゃないかとすら思う。
品田さんと話す時間も次第に増えて、好意を持っちゃったりして。嬉しい気持ちと比例して、悔しい気持ちも増えた。
それは、品田さんがいつも纏っている匂い、風俗店の、風俗嬢の独特の匂い。
品田さんの仕事はもちろん知ってるし、仕方ないって頭では分かっていても心が許さない。
だからこうやっていつもいつも下らない意地を張って、反抗的に冷たく当たってしまう。
それを本人は分かってくれないんだからたちが悪い。
「べつに、何もしてないんじゃない?」
「いーや!絶対怒ってる!言ってくんなきゃ分かんないよ?」
「もーしつこいよ!今日もお仕事あるんでしょ、早く行ってよ」
ふふんと何かいたずらを企む子供みたいに笑った品田さんは、私をぎゅっと抱き締めた。
「な、な、ななな!」
「今日は仕事ないんだ〜、だから今日はななちゃんとずっと一緒に居るって決めたんだ」
スリスリ、と頭を擦り付ける品田さん。
なんだか可愛くて、無意識に頭を撫でていた。
「ななちゃん、ドキドキしてる」
「してないもん」
「してるよぉ!てか、嬉しそう?」
「だ、誰が!!」
「またまたぁ〜、いい加減認めちゃいなよ」
耳元で吐息たっぷりに囁かれたのは
「俺のこと大好きって」
というなんとも挑発的な言葉。
「えっ、やっ…その…」
「あれ?違った?じゃあもうぎゅってするのやめよっか」
「え、えぇっ!?」
力を緩めて離れていく品田さんに、今度は私から抱きついた。
「す、好き!好きです!冷たくしてたのは…その…」
「ん?なぁに?」
嫉妬してた。なんて恥ずかしくて言えない!
品田さんの逞しい胸に顔を隠す。品田さんは私の頭をあやすように優しく撫でてくれた。
「なんで冷たくしてたの?知りたいなぁ」
「え、と…その…他の、女の人の…匂いがして…嫌でした…」
「それ嫉妬?可愛いなぁ!もう!」
またぎゅっと、抱き締められた。
-------------------
オチが見えなかったから終わりたまえ