□バレンタイン
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昼間のファミレスは人が多い。

席が埋まっている中、一角だけ、ひとつのテーブルを避けるようにして席が空いていた。

そのテーブルには私と、普段ファミレスなんかに絶対来ない龍司さんが座っていた。

龍司さんは無言でチョコパフェを貪り、私は小さくなって向かいの席に座るだけ。


「あ、の…」

「なんや」

「美味しいですか?」

「あぁ、美味い、まるで手作りのようや」


わざと手作りの部分を強調して言った龍司さんに、やっぱり怒ってるなと再確認。

彼が怒る理由はただ一つ。
私がバレンタインを忘れて贈り物を作っていなかったから。


「ほんとすいません…」

「んぁ?何の話や」

「バレンタイン…忘れてて」

「…」


パフェを食べる手が止まった。

うそ、より怒らせちゃった?

まずいぞ、と思いながら龍司さんにニコッと笑いかけると
あることに気づいた。


「あ、龍司さんクリーム付いてる」

「どこや」

「ここですよ」


ここ、と自分のほっぺを指さすが、反対側を触る龍司さん。


「惜しい!反対側です!」

「付いてへんぞ」


龍司さんそこ違う…
もう私が直に取ってあげた方が早い!

身を乗り出して、クリームの存在を教えようとした時、手首を引き寄せられて唇に柔らかい衝撃が。


「んむ…!!」


ペロっと私の唇を舐めて離れた龍司さんの唇。
まるで熱でもあるかのように熱くなる顔。


「りゅっ、龍司さん!?」

「はんっ、ごちそーさん」


ニヤニヤしながら口元のクリームをを拭う龍司さんにドキッとした。

クリームの位置、分かってて意地悪されたのか…!


「えぇバレンタインのプレゼントやったで、ホワイトデーにはきっちり3倍にして返したる。楽しみにしとけや」

「3倍…まさか…!」

「大丈夫や、気持ちよぉしたるって」


それはもちろんスるってことで、ヤるってことで、なんてことを言い出すんだこのおっさんは!
ホワイトデーは逃げなくちゃ!





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