吉原から始まる”恋”と言う名の物語

□吉原桃源郷にて 夢主と神威
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ドタドタドタドタ……


吉原のさっきまで鳳仙と神威が戦っていた建物の中で、
吉原の百華たちが走る音がする。

どうやら侵入者がいる様だ。




「そっちは子供の方に当たれ!!

私達は侵入者の方に当たる!!」




ドタドタドタドタ…



そんな百華達の騒ぎを
ふすまの少しあいている間から見ている人達がいた。

神威と阿伏兎だ。







「侵入者?
大した騒ぎだね。」



神威が阿伏兎に向かって言った。



「あんたが起こしてくれた騒ぎよりマシだろう。」



阿伏兎はさっきの一件でおった、
自分の傷の手当をしていた。



「何だよ、
まだ怒ってんの?

過ぎた事は忘れないと
長生きできないよ。」


「いや。
死んじゃったからね。
1人。

商売なんざ興味もねーくせに
珍しくついて来るなんて言うから
おかしいと思ったんだ。

あんた、最初から鳳仙と
殺り合うつもりだったな?」

「へへ。バレた?」



神威は手すりに座り、
足をプラプラさせながらいった。




「バレたじゃねーよ、
すっとこどっこい!

おかげで取引も何も
メチャクチャだ。

かけ引きの道具も騒ぎの最中に
逃げちまう始末。」



阿伏兎が憂鬱そうに言った。

その時、突然此処にいるはずのない人物の声が響いた。






『クスクスっ…それは
大変でしたね。』


「?!」



阿伏兎はいきなりの事で驚いて
瞬時に後ろを向いた。

神威は静かに左を見る。


そこには神威から少し離れた
手すりに座って、

吉原の夜景を美しそうに
見ながら笑っている瑠亜がいた。





「…やぁ、瑠亜。
さっきぶりだね。」




神威は少し間をあけて、瑠亜に話しかけた。


そんな神威に瑠亜は
ニコリと微笑んで返した。









トクンっ……


まただ。

瑠亜をみると、
毎回こうなる…。










「あんたは確か…。」


『瑠亜です。
以後、よろしくお願いします。

貴方の名を伺ってもよろしいでしょうか?』


「あ、あぁ。
俺は阿伏兎。

まぁ、これから長い付き合いになりそうな気がするから、

一応よろしくといっておこう。





さて、と。」




何時の間にか傷の治療も終わり、
服もきちんときていた阿伏兎は
マントを羽織って立ち上がった。



『どちらに?』

「ちょっくら、鳳仙の貸りを返しにいってくらぁ。」



阿伏兎はそう言って歩き出した。
だが、そんな阿伏兎に神威は言った。




「もう帰ろうよ、阿伏兎。
つまんないよ。
もうこんなトコ。」

「帰れ帰れ。
怖いじーさんに殺される前にな。

このまま鳳仙に貸し作ったまんま
帰れねぇよ。

我々下々の者は、団長様の尻ぬぐい、いや……海賊王への道を切り拓きにでも行くとしまさぁ。
くくく。」


「頑張ってね〜。」




そう言って神威は阿伏兎を見送った。



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