吉原から始まる”恋”と言う名の物語

□吉原桃源郷にて 神威と鳳仙
1ページ/3ページ







ある一室にてーーー……






他の部屋とは違う、特別広い部屋。

そこは鳳仙専用の部屋であった。




そしてそこに鳳仙と遊女が3人、そしてもう1人…神威がいた。


神威はたらいの様な器に入ったご飯を何杯も食べていた。



「これはこれは珍しい御客人で…。

春雨、第7師団団長…神威殿。」



「ん〜…やっぱり地球のご飯は美味しいね。鳳仙の旦那。」


「こんなげせんな所に何の御用ですかな?」



鳳仙はそう言ってニヤリと笑う。



「人が悪いですよ旦那。
第7師団創ったのは、旦那でしょ?
面倒くさい事全部俺に押し付けて、自分だけこんな所で悠々自適に隠居生活なんて、ズルいですよ。」



神威は相川らず笑顔。
ただの笑顔。
何の感情も無い、笑顔。



「人は老いれば身も心もかわく。

その身を潤すは酒。
その心を潤すは女よ…。

くくっ。

若い主には分からんかぁ…?」


「いえ、分かりますよ。」


「ほぅ…しばらく会わんうちに飯以外の味も憶えたかぁ…?

くくくくくっ。

酒か、女か、言え…!」




その言葉に待っていましたかという様にニヤリと神威は笑う。



「じゃあ…日輪と一晩。」




その言葉を聞いた途端、鳳仙の笑顔が消える。

それと同時に部屋の雰囲気が険悪になる。




「手土産もこの通り準備して有るんです。」




そう言って神威はふすまの方を指した。

そこには神威の部下、阿伏兎、云業がいた。

そしてその2人の間には日輪の息子の晴太がいた。



「きっと喜んでサービスしてくれるでしょ?」


「………。」


「嫌ですか?
日輪を誰かに汚されるのは。

嫌ですか?
日輪をこの子に連れ去られるのは。

嫌ですか?
日輪と離れるのは。」



「…少し黙るがいいかむ…「ふっははははは。

歳はとりたくないもんですねぇ。

あの夜王鳳仙ともあろうものが、たった1人の女すらどうにもならない。

女は地獄、男は天国の吉原?

いや違う。
此処は旦那、貴方が貴方の為だけに創った天国。」



そう言って神威は立ち上がり、鳳仙の元へと歩いて行く。



「神威、黙れと言っている。」



鳳仙は挑発してくる神威に向かって、静かに低い声で言う。

そんな鳳仙に構わず神威は話し続ける。



「誰にも相手にされない哀れみなおじいさんが、可愛い人形達を自分の元に繋ぎ止めておく為の牢獄。」



神威は話しながら鳳仙に酒を注ぐ。



「聞こえぬのか神威。」




段々と鳳仙に怒りが溜まってくる。

それに気づきつつもなおもまた、話し続ける神威。




「酒に酔う男はえにもなりますが…女に酔う男は見れたもんじゃないですな。

エロじじい。」




その言葉を最後、
鳳仙は怒りを抑えきれなくなり、神威を持っていた扇子で天井へと叩きつける。

それは天井へとめり込んで、血をタラタラと流している。




「あ、あ、あぁ…
あぁぁぁああぁーー……!!」




それを見た遊女が叫ぶ。

鳳仙は神威に注がれた酒を飲み、怪しい笑みを浮かべながらいう。




「くっくくくく。
貴様らわしを査定に来たのだろう?
気付かぬとでも思っていたか。」




鳳仙は立ち上がり、酒の乗っている台を蹴る。




「上の差し金だろう。
巨大な力を持つ吉原に恐れを抱き始めたか…。

吉原に巣食うこの夜王が邪魔だと……?

主らにこの鳳仙を倒せるとーー……?」




そう言う鳳仙に阿伏兎が答える。




「やぁぁ…あんたといえど、春雨と正面からやり合う気にはなれんだろう…。

よぉく考えて行動した方が身の為だ……。」




阿伏兎が少し焦る様に言う。




「そいつぁ困るなぁ。」




その声に鳳仙は少し驚いた様に顔を顰める。

その声は先程鳳仙に殺すされたはずの神威がいた。

そして天井からは遊女が落ちてくる。

ぐしゃり…

嫌な音がする。




「そんなじゃ、俺のかわきはどうすればいい?

女や酒じゃダメなんだよ。
俺はそんなものいらない。

そんなんじゃ、俺はのかわきは癒えやしないんですよ。」




鳳仙は神威の方を向いてニヤリと笑う。

神威が鳳仙の頬に傷をつける。
そしてそこから血が流れる。

畳にポタリと血が落ちる。




「血ーー………。

修羅が血。」




.
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ