吉原から始まる”恋”と言う名の物語

□吉原桃源郷にて 銀時と鳳仙
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「君のお母さんはここにいる様だよ。」





神威の声が静かな空間に響き渡った。


神威たちの目の前には大きな扉があった。

外の鍵の様なものは簡単な作りのものであるところから、

おそらく内側からも鍵がしめられていて
常人ならば開けられないだろう。





「こ…ここに母ちゃんが。」






晴太がそういったあと、神威は日輪の事を話し始めた。

瑠亜はそれを目を鋭くさせ
つまらないとでもゆうような態度で神威の話しをきく。







「八年前
君を逃がそうと吉原から脱出し

鳳仙に捕まった時から君の自由と引き換えに

日輪の自由は奪われた。


花魁なんて
名ばかりのただの飾りさ。

鳳仙は日輪を
客寄せパンダとして使う以外は
ここに閉じ込め、客も取らせず

一切の自由も認めなかった。


吉原で腐って死んでゆく事を日輪に強いたんだ。

いや、日輪自身がそれを選んだと言っていい。
君を護るために。


それでも君はここに来た。

日輪が君を護るために長年耐えて来た辛苦も覚悟も無駄にして危険を冒してまで。

それでも日輪に会いに来た。


君にも君の覚悟とゆうものが有るんだろう。

ここから先は君の仕事だよ。」









そう神威が言うと、晴太は日輪がいる部屋の扉の前に行った。


それを見ていた瑠亜は神威に呟いた。





『ここからは長くなりそうですね。

それでは私は高みの見物とでもしましょう。』







そういうと瑠亜は物凄い高さを飛んで、一番上の階の手すりに腰を掛けた。






『私はここで見物させてもらいます。』






神威と瑠亜の距離は遠かったが、
静かなその場所では瑠亜の少し高めの声はよく響き、

はっきりと聞こえた。





「そうかい。

けど、俺はここで見させて貰うよ。」






神威はそういうと、ふと晴太の方をみた。


晴太が日輪の説得をしているところであった。






「あんたの母ちゃんなんて…ここにはいない。

そう言ってるだろ…。」






日輪がそう言った時、ここにはいないはずの声が聞こえた。






「そんな事あるまい。」






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