吉原から始まる”恋”と言う名の物語
□吉原桃源郷にて 夢主と神威
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「さて、阿伏兎は行っちゃったし。
俺達はどうする?」
神威がいつもの無表情の微笑みで瑠亜に向かって言った。
『さぁ?
お客様の好きな様に。』
瑠亜はニコリと笑った。
瑠亜は神威に全てを任せるつもりの様だ。
「それじゃあ…見にいくかい?
吉原の太陽、日輪を。」
『お客様がそうしたいのでしたら。』
そして2人はその部屋を後にして日輪の元へと向かって行った。
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ズシャァァァっっーー……
肉の裂ける様な嫌な音がする。
そこでは沢山の血が舞っていた。
その血の量と、死体の量の多さに常人ならば、吐くであろう匂いが漂う。
その中に夜兔が2人…。
神威と瑠亜だ。
神威は少しだが、手に血を着けている。
まさに此処にいる百華を自分が殺したと言わんかばかりである。
瑠亜は凛とした顔で神威のそんな行動をただただ、
静かに、妖しく微笑みながら見ていた。
ドタドタドタドタ……
吉原の自警団、百華が2人に向かって走る。
それと同時に血が飛び交う。
ズシャァァァっっー……!
何故こんな事になっているかは、時は少し前に遡る。
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ドタドタドタドタ…
神威達の前を吉原の自警団、百華達が走っている。
神威たちはそんなのに構わず日輪の元へと急ぐ。
その時ー……ある百華の1人が神威達に話しかけた。
「そこの客人。
そっちへ行ってはなりません。」
「へー。そうなんだ。
俺達日輪探してるんだけど、
もしかしてこの先に日輪が居たりする?」
神威がそう聞いた途端、百華の女が顔を顰めた。
そして言った。
「貴様ら…侵入者か…!!」
どうやら日輪はこの先に居るらしい。
それは分かったが、神威達はどうやら百華に侵入者とみなされた様だった。
「さぁ?どうだろうね。」
そう言ったあと神威はクスリと笑った。
そして百華の女は叫ぶ。
「侵入者!侵入者だーーっ!!」
それを聞きつけて百華の女達が駆けつける。
『…面倒な事になりましたね。
どうなさいますか?』
「面倒なのは嫌いさ。
ねぇ、殺してもいいかい?」
『私は特に関係ありませんので、好きな様になさってくださいな。』
それを聞いた途端、神威が動いた。
ズシャァァァァっーー……!!
百華の女達の血が舞う。
それは一瞬の事であった。
そして神威は妖しく笑う。
いつも閉じていた目を鋭くあけて、
その綺麗な蒼い瞳は無邪気に
遊びを楽しむ
子供の様な感じの瞳だった。
百華の女達の血が神威に降りかかるそれはそんな神威にとても似合っていた。
それをみた瑠亜は思う。
あぁ……なんて綺麗な人…。
男の人に向かって“綺麗”なんて使うのは変かもしれない。
だけど…それしか思い浮かばなかった。
それしか当てはまらなかった。
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