癒しの竜

□EPISODE 5
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3日目の夜


ルカはポーリュシカのところに来て、義肢を治してもらっていた。



ポ「ほら出来たよ」
「ありがとうございます」


出来た義肢を受けとると右腕に付けて動きを確認した。


「はい、何も問題ないです」
ポ「そうかい。
まったく、義肢を飛ばされても戦うなんてバカだね」
「あ、はは…
でも、仲間の為に勝ちたかったんで。引き分けで負けてしまいましたけど」


ルカは右腕をグルグル回し不具合がないか確認した。



「では俺は戻りますね。
ありがとうございました」


ルカは医務室を後にした。









「少し遅くなったな…」


ルカが宿を目指して歩いていると、


?「なかなかの勝負だったぞ」
「っ!!」


目の前に黒髪の長い女性が出てきた。
その姿を見るなりルカは冷や汗を流した。



?「そなたが戦える魔法を持っているとは、妾は知らなかったぞ」
「ミ…ネル…バ…」


女性は剣咬の虎のミネルバだった。


ミ「妾のことはお嬢と呼べと言っているだろう」
「っ…俺に何のご用で?」
ミ「何、久々に見たから懐かしく思ったまでよ…
まさか…7年前と姿が変わってないことに驚いたがのぅ…」



ミネルバは壁に寄りかかった。



「…俺も天狼島に行ってたもので…
それじゃあ俺はこれで」


ルカがその場を後にしようとすると、


ミ「待て」


ミネルバに止められた。


「……何か」
ミ「今のそなたなら妾が父上に言って、剣咬の虎に戻してもらうよう言ってやるが?」
「!……それは俺に戻ってこいと…?」
ミ「話が早くて助かる」


ミネルバはニヤニヤ笑っていた。
ルカは俯き拳を握った。


ミ「そなたの力は妖精の尻尾にいるより剣咬の虎にいてこそ価値のあるもの。
7年前のそなたの行為を水に流してやるぞ」


ミネルバがルカの方を見たその時、


ゾクゾクッ


ミ「っ!?」



ミネルバは感じたことのない魔力をルカから感じとった。


「……いい加減にしてもらってもいいですか…?」


ルカは怒りの表情をミネルバに向けた。


「俺はそっちのやり方が気に入らなくて抜けたんです。それが7年経っても変わらないなら俺は戻る気はありません。
それに、俺の求めていたものは全て妖精の尻尾にある。ならば、俺はこの魔法を妖精の尻尾の為に使う」


それだけ言うとルカはミネルバに背を向けた。


「それと…もし妖精の尻尾のみんなを傷つける様なことをしたら…
ただじゃおかねぇからな…」


ルカは宿に向かって歩きだした。
この時、ミネルバにはルカの目が藍色ではなく紅色に見えたのだ。










「……はぁ」
グ「おかえり、遅かったな」


宿に戻るとグレイがいた。
ルカはグレイの姿を見るなり、


ギュッ


グ「なっ////!?ル、ルカ!?」


グレイに抱きつき首もとに顔を押さえつけた。
突然の事にグレイは顔を赤くした。


「悪い……しばらくこうさせて…」
グ「べ、別にいいけどよ…何かあったのか?」
「ちょっと……昔の人に会った…」
グ「!!剣咬の虎か…?」
「ん…」


ルカは頷くと更に強く抱きついた。


グ「…何言われたか知らねぇけど、お前は俺達妖精の尻尾の仲間だろ?
俺達はお前を裏切ったり、見捨てたりしねぇから」


グレイはルカの頭を撫でながらそう言った。
その言葉にルカは涙を流しそうになった。


「ありがと…グレイ」
グ「おう」



その日ルカは良く眠れたのだった。












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