銀の森

□思い出して
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誰でも、大切な人が事故や大怪我したら、血相変えてその人の元へ向かうと思う。
私もそうした。

でも、
向かった先で……

私の大切な人は私を忘れてしまっていた。






高杉が事故に遭ったって聞いて直ぐに鬼兵隊の船へ向かった。
連絡をくれたまた子はそれはもう泣きながら早く来いと言っていた。
一通りの説明を聞き終えて、暫く留守にすると神楽たちに置手紙を残し、港へ向かった。

今日は高杉と年に何回か会える日。
最近は忙しかったのか二ヶ月も音沙汰無しだった。
だが先日、待ちに待った彼からの電話でもう直ぐそちらへ向かうと連絡があったのだ。

まるでウキウキと子供みたいに楽しみにしていた。
だが、そうしていたのも束の間、また子から連絡がきたのだった。



「(――高杉…たかすぎ…晋助!!!)」

あんなにしぶとい奴が簡単に死ぬわけない。

たとえ世間一般で袂を分かち合ったと言ってもそれは外見だけ。
本当は己たちは愛し合っている。
愛おしい人が死ぬなんて考えれない。考えたくもない!!

でも、どうか死ぬのであれば、せめて己が船について、あなたの最期を見送らせて!!

我武者羅に走って走って…港に着いたときには電話を貰ってから三十分程経っていた。



「銀時殿!こちらでござる。今は落ち着いているでござるよ」

万斉の声で一先ず安心する。
死には至らなかったらしい。

「よかった……晋助が死んだら、どうしようかと……」
「はて?晋助は死ぬような怪我などしてござらんよ」

…………は?

「いや、だってまた子ちゃんが泣きながら…」
「また子も相当あせっていたでござるな。晋助はただ主との再会に頭が一杯で前を見ていなくそのまま壁に激突しただけでござるよ」


   ゴッ!!


万斉の顔すれすれのところに銀時の拳が壁に綺麗な皹を作っていた。
パラパラと小さな欠片が落ちる。


「……心配して?走ってきて?なのに?何?壁に?激突した?だけ?は?ふざけてんの?」
「ふざけてなどござらん。ただそれが真相でござる」


怒りオーラをぶちまける銀時に万斉はいたって真面目に受け答えする。
ただ、内心かなり焦っていた。
銀時は攘夷戦争時代、白夜叉として恐れられてきた。
はっきり言って鬼兵隊を壊滅させるなんて雑作もないことだろう。

なるべく火に油を注がないように銀時を高杉の部屋に案内する。
その後また子が死にそうになるだろうが、ここでは我慢してもらおう。

部屋に入れば高杉は起きており、何故か先程までいた筈のまた子は居なかった。


「晋助、もう起きても平気でござるか」
「……あァ……?」
「全く、人騒がせ。……早く銀さんに甘味を奢りなさい」


「つーか……お前ェら…誰だ?」
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