銀の森

□マドンナ
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『この学校にはな、3年にマドンナがいるんだぜ。でもマドンナは気まぐれでな、学校には殆ど来ないんだ。だから来た日はまるでお祭り騒ぎだぜ』


高校に入学してから生徒会の人が言っていた。

だからどうしたんだ。と初めは思っていたが、その日、“マドンナ”が学校に来た。

生徒会の人が言っていたようにお祭り騒ぎで一年の俺たちはその姿を見ることは出来なかった。

だが俺はそのマドンナと屋上でバッタリ出くわしてしまった。

はじめ目についたのは綺麗な腰まであるふわふわの銀髪。

驚いたように目を見開いていた瞳の色はルビーのように赤かった。

一瞬で俺はマドンナに恋していた。

だが恥ずかしいものの、俺はまだ恋未経験者だった。初恋もまだ…いや、今初恋してる。

俺の初恋の相手は高3の先輩のマドンナ。

屋上の入り口で固まったままの俺が可笑しかったのか、マドンナは綺麗に微笑み、こっち来たらー?と声をかけてきた。

マジかよ。声も可愛いじゃねェか。


「君一年生?今四時限目だけど、まさかもうサボり?」

「…先輩もサボってんじゃないっスか。いいんスか?学校に来るの気まぐれって聞きましたけど?」

「あれ、私そんなユーメー人?まー気まぐれってのはホントだね〜。めんどいもん。授業。はっきり言って私もう高校来なくてもいいんだけど…」

「?何でですか?」

「あー、私ハーフでさ、外国で暮らしてたことあったんだけど、そこで飛び級バンバンしまくって大学出てるもん」

「?!!…マジッスか…」

「さっきから気になってたんだけど敬語じゃなくていいよ〜?私タメで話してもらうほうが落ち着く」

「…じゃァ…これでいいかァ?」

「独特なしゃべり方ですね。…あ、一年生ならさ〜桂小太郎って知ってる〜?」


その名前を聞いて驚いた。

確かに知っている。

とゆーか俺とヅラは所謂幼馴染だった。

なのになぜこのマドンナが知っているのか…


「知ってるが…知り合いなのか?」

「こーちゃんはねー、小さい頃よく遊んであげたんだよね〜。家近所だったから。あそこの親御さんキビシーでしょ?勉強も偶に見てあげたりとか」

「…俺ヅラと幼馴染なんだけど…」

「ん?そなの?こーちゃん家の近所?」

「すぐ隣…」

「……あぁ、君晋助君か」

「?!!な、何で知ってる?!」

「あれ、覚えてない?晋助君とも遊んだのにな〜」



はあああ?!!え?!俺そんな記憶ないぞ?!

何だ?!とゆーことは俺は小さい頃こいつと会ったことあるのか?!

くそっ!!何で覚えてないんだ俺は!!



「私銀ーって呼ばれてた。二人に。フフ…可愛かったなぁ二人とも」


銀?…銀、銀、ぎん…あーっくそっやっぱ思い出せねェ!!



「覚えてないか〜。まぁいいけどね」


え?!いや、俺が良くないんだが…

一生懸命思い出そうとしていると不意に頭に何かが乗った。

それがこの人の手だと分かると一気に頬が熱くなった。

心臓もバクバクいってて破裂しそう…



「晋助君大きくなったね〜。あ、そうそう。私の名前は坂田銀時だよ」

「日本名だけ…?」

「……うん。本名は全然変わらないよ?シルバーだもん。そのまま“銀”」

「シルバーねェ…本当マンマだな」


少しくすくす笑うと笑うな〜とデコピンされた。地味痛い。

するとそこで授業の終了を告げるチャイムが鳴り響いた。

お別れか…と少し残念がっていると銀時はその場にペタンと座り込んだ。



「…何してんだよ?」

「え?四時限目終わったからお昼ご飯。ここ立ち入り禁止なんだよ。知ってた?」

「だからサボるためにここ来たんだよ」



あぁ、そっか〜と呑気に笑う銀時。

銀髪がキラキラ光っていて、一言で言うなら美しかった。


俺も昼飯食いに戻るか…と思ったがなぜか今帰ったら二度と会えないような気がした。



「ん?どしたの?きょーしつ戻らないの?」

「……なァ…今日はずっと居るのか?」

「ん〜。昼休み終わったら帰るかな」

「…ならお前が帰るまでここに居る」

「……プッ。あははははは」



いきなり笑い出した銀時になんだよ…と問いかけるとごめんごめんと謝ってきた。


「昔ね、似たようなこと言われたんだよ。君に」

「あ?俺に?」

「そう。その日は私と晋助君だけで遊んでたんだけど、

家は共働きでね、しかもその日は帰れないって連絡あって、家帰るのめんどくさいな〜って思ってブランコ座ってたんだよ。
そしたら晋助君も隣に座ってね、帰らないのって訊いたら銀が帰るまで一緒に居るって言われてさ〜。
晋助君の家は勿論門限あったからじゃあ帰ろっかって言って一緒に帰ったんだよ。

それ思い出しただけ。
あの頃の君は良く笑って可愛かったよ」


にこにこと話す銀時。

勿論俺にその記憶はない。

だが、話を聞くところその頃から多分俺は銀時のことが好きだったんだろう。

門限でも少しでも一緒に居たいからって……

佇んでいると晋助くーんと呼ばれ銀時の方を見る。

その手には焼きそばパンが握られていた。


「晋助君甘いの嫌でしょー?よかった。買ってきといて。ほら、これお食べ。それかダッシュでお弁当取ってくるか」

「い、一緒に食っていいのか?」

「いいに決まってるよ。どうする〜?」

「……(どうせ購買だし)貰う」

「はいどーぞ。あ、昔話もっと聞かせてあげようか〜?」

「…あぁ。聞かせてくれよ」



マドンナの隣で昼飯食ったんだぜって自慢してやろうか…いや、秘密にしておこう。


それから俺は銀時が学校に来たときの四時限目は必ず屋上に行っている。

ちゃんと昼飯持って。

そして昼休みになれば必ずヅラも屋上に来るようになっていた。


そういえば俺銀時のメアドとか知らねェ…

ついでに住所も聞いてやろう。


「んー?住所?二人の家の前の家だけど?あ、今日ケータイ忘れちゃったからまたね」


俺とヅラの家の前の家って…あのいかにも高級そうな一戸建て…?

マジかよ。

つか家近!!


ヅラはまた勉強を見てくれと約束をしていた。

俺も負けじと約束を取り付けた。





「じゃあ、今日学校終わったら家来なさい。どうせなら夕飯食べていく?父さんと母さん今日も遅いから大丈夫だよ」



まさか家に行けるとは…

早く放課後になれ!!

あぁ、でもまだ話していたい…

と思っていた矢先、昼休みを終えるチャイムが鳴り響いた。

銀時も帰るらしく教室へ一緒に向かった。

途中で分かれて、俺はあと二時間時計と睨めっこしながら放課後を待つのだった。




end

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