柳瀬優

□ケイタイ小説
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【悪夢】
2013/10/9 16:31

目覚めた時には不快な汗でシャツがべっとりしていて酷く喉が渇いていた。

あぁ…



最悪な夢だった。


悪夢と言うのだろうか…

あまり夢を見る事すら無い俺は心臓の高鳴りを落ち着けようとしていた。不定期にドクドク言うそれは恋と似ている気がしたが全く正反対で耳障りでしかない。


夢の世界ぐらい、一瞬しか見えない世界ぐらい、幸せにして欲しい。ただ、分かってる。儚いだけの世界、起きたら手からすり落ちる世界、そんな物に期待したって意味のない事ぐらい…

それでも…



一瞬でも違う世界を見たかったと思う。





「おはよう!って、優!すごい隈!!どうかした!?」

「ー…良く眠れなくてな」

確かに鏡を見ても蒼白く目の下には隈が出来ている。何も不定期なこの仕事では珍しい事では無いが比較的に隈等は出来にくい方なので千秋が驚くのも無理はない。



「そっか…んー…あ!」

千秋は何かを思いついたように俺に待つように言って自らの部屋へと走って行った。


「これ!!」

ほどなくして、千秋に渡されたのは人形だった。


「なにこれ?」

「ティンクル!」

いや、それは知ってる。エメラルドのマスコットキャラのウサギだ。


「これを抱いて寝ると良く眠れるから!優にあげる!」

千秋はニッコリと笑って言う。


「…サンキュー」



今日は良い夢が見られそうだと根拠もなく俺は思った


なにより千秋が笑っていてくれて良かった。
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