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□【愛着】
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あいつを置いていってから、2年が経った。
帰国してから、あいつを探すのはたやすかった。
再会して、声が出ないくらい驚かれるのは、まぁいい。唐突に行って、唐突に帰ってきたから仕方ない。
だが、顔を見た瞬間驚きで固まったと思ったら、背を向けて走り出すってどういうことだ!?
「っテメ、待ちやがれ!!」
「っ…」
聞こえているだろう俺の声に、何も言い返さずに逃げる駄犬。
んなふうにしつけた覚えはない。
俺の苛立ちは積もるばかりだ。
しかし、街の中での追いかけっこは長くは続かない。
あいつも運動神経がいい方だが、俺には劣る。
伸ばした手に、易々と捕まる細い腕。その細さに、驚きを覚えた。
「…何でこんな痩せてるんだよ」
明らかに身長と似合わない。
もともと体つきは細いが、前はここまでじゃなかった。
「関係、ないだろ…」
俯いたまま、返ってきた言葉は弱々しい。
前髪に隠された表情が、今どんなものなのか、見なくてもわかった。
当然だ。
こいつは、俺のものなんだから。
所有物のことくらい、ちゃんと理解している。
このまま追求してやりたい気分だったが、外ということもあって話づらいので、何も言わない駄犬の腕を引いて、俺の家にたどり着いた。
その間、啜り泣く声が微かに聞こえていた。