白桃の籠 〜ハクトウノカゴ〜
□純白の壁〜ジュンパクノカベ〜
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普通、死んだ後の生き物は、“前世”の記憶が無いものなんだとか。
…私みたいな人間は珍しいらしい。
一般的に、生まれ変わるって言えば
もう一度赤ん坊として生まれてくる
ってイメージだけれど、
実際には、かなり違うことが起こる。
あの後、仙人みたいな格好の男の人は、なにも知らない私にもわかるように、人間の死後と私のこれからについて丁寧に説明してくれた。
…。…゜…。…゜…。…゜…。…゜…
「桃花空殿、
貴女は、前に居た世界では亡くなりました。
ですが、これから貴女は新しい世界に生まれ変わります。
まずは、生まれ変わることがどういうことかを説明します……」
人は、寿命を全うしないまま死ぬと、
二次元にとばされる。
その際に、その人物が今までも二次元に住んでいたことにするために、この部屋で死者に記憶を植え付ける。
死者と関わることになる人々にもその人物についての記憶を吹き込んでおく。
これで準備おーけー、あとは新しい世界に送り出すだけ!というわけ。
因みに、容姿や性格はあまり変わらない。歳も変わらない。
生まれ変わることは、また赤ん坊になることではないそうだ。
「… 本来ならば、ここにいらっしゃる頃には、死者の皆様は前世の記憶が無く、昏睡状態になっています。
しかし、記憶を植え付けようとした際に、空殿の身体は、新しい記憶を拒絶し、跳ね返した。
それでわかったのです、貴女もお姉さんのように、記憶が残っていることが」
お姉さん…姉さんにも、記憶が残っていた。
少し安堵した。
だって、私のこと、忘れてないってことだから。