長い書物庫
□<序章> 青の陰謀
1ページ/1ページ
そこは、青だった。
青で埋め尽くされていた。
正確に言えば、青い「水」で覆われている。
どこまでも深く、深く、底のない青さ。
それは、まるで暗闇の底に眠る竜を隠しているかのような、静かな気迫に満ちていた。
微かに漏れ出る、制御しきれない殺気がそれを物語っている。
そこは深海かと思うほどに海の底に近い色をした、
部屋だった。
中央に男が立っていた。
ポツリと言葉をもらした。
「人魚姫は妖精に囚われている、か……」
男は身を翻し、部屋をでた。
後に残ったのは、青と、静寂と、グラスに入った水だった。