短い書物庫
□にゃんという日
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「……これは、」
魔導士ギルド、フェアリーテイル。
フィオーレ王国きってのお騒がせギルドのクエストボードの前で、ジュビアは小さく呟いた。
季節は梅雨から夏へと移りかわり、ジュビアの嫌いな雨は幾分少なくなったものの、うだるような陽射しとむせ返る温度が襲いかかる。
額に張り付く髪をかきあげて、ため息をもらす。
「依頼書にまじって、魔法陣の書かれた紙が貼ってありますね…。誰かのいたづらでしょうか。」
この手の魔法陣に触れると、何が起こるかわかったものではない。
ジュビアは取り敢えず、ミラに報告しようと思い、前に傾けていた身体を起こす。
そしてそのままの動きで後ろを振り返り、目線をあげてミラを探す……
はずだったのだが。
視界に広がる桜色と、ほんの一瞬だけ遅れて伝わる鈍い衝撃。
ドゴッ!という音とともにクエストボードに叩きつけられたジュビアの背中には、輝く魔法陣が押し当てられていて。
次の瞬間、ギルドが白い光で満たされた。