SKET DANCE

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金曜のHR終了後。

ざわめく教室で、


「ラブレター?」

「そう。ラブレター渡して来てくれない?」


大事件が勃発した。



青春ラブレター



「私が?!何で?!誰に?!」

「安形くんに。桜って安形くんと仲良いじゃない。」

「いっ、嫌よ!何で私が惣司郎に!!」

「いいじゃん、お願い!!」

「っていうか!あんた…そ、惣司郎のこと…す、好きなの?」

「え?う、うん…。」


開いた口が塞がらない。


「……そ、そうなんだ…。」



でも、どうにか塞いでみた。

知らなかった。

一番の友達だと思ってたナナが、惣司郎のこと好きだったなんて。

なんか、すごくショック。


「う…うーん…で、でも、これは自分で渡しなよ。」

「私じゃだめなの。桜に渡して欲しいの。」

「え?!い、意味分かんないよ!」

「桜は安形くんのことどう思ってるの?好きなの?」

「なっ!?べ、別に好きじゃないわよ!あいつはただの幼馴染で…」

「好きじゃないならいいじゃない。じゃあお願いねー!」

「えぇっ?!ちょ、待っ…!」


ピューっという効果音が聞こえてくるように、友人ナナは走り去っていった。

私の手には赤いハートのシールで封をされた白い封筒。

べたな感じのラブレターだ。

ぺラっとしたそれは、なぜかすごく重く感じた。



「ど、どうしよう、これ…」


とりあえず手紙を手に持ち、教室を出て歩いていると、後ろから聞きたくない声が聞こえてきた。


「おーい、桜じゃねぇか。もう帰るのか?」

「げっ!!そっ、惣司郎?!」


よりによってこんなタイミングで会うなんて!!


「『げっ』てなんだよ。お?お前何持ってるんだ?」

「べ、別に何も持ってないわよ!」

「…ふーん?」


慌てて後ろに手紙を隠すと、怪しげに惣司郎が笑った。

あれ?私なんで隠してるの?


「ひょっとして告白でもされたのか?」

「は?な、何言ってんの?」

「後ろに隠したの、手紙だろ?ラブレターとか?」


げっ!こいつ、目良すぎ!!

どうしよう。


…ん?

ていうか…何で私が緊張してるわけ?

私が書いたわけじゃない。

私のラブレターじゃない。


私にとって、ナナは親友で、

私にとって、惣司郎は、

幼馴染だ。

そうだ…

なにを躊躇う必要があるっていうの?

何もないじゃない。


それでも胸が高鳴るのは、

手が震えるのは、

親友と幼馴染という二人の「大切な人たち」が同時に幸せになるか、

そうでないかの瀬戸際にあるからだ。

そして、それは私にかかっているからだ。

責任重大じゃん。

ごくりと息を飲むと、からからに乾いた口でこう告げた。


「これ、惣司郎に。」

「ん?俺に?」

「そう。読んで、真剣に考えて。真剣に考えなかったら、マジでぶっ殺すから。」

「おいおい、なんか物騒だな。つーか、本当にラブレターだったのか…。」


そう言いながらゆっくりと封筒を受け取った惣司郎。

ぺらっと封を開け、中から手紙を取り出し、便せんを開いて読みだした。

私は急に胸が締め付けられるような感覚に陥って、

その場から走り出したいのに、それもできず、

足が地面に張り付いたように、その場に立ち尽くしていた。

二人して立ち止まっていると、下校でざわついていたはずの廊下が静かになり、

開け放された窓の外から聞こえる運動部の掛け声が僅かに聞こえた。

一秒が何分にも感じた。


惣司郎は…どうするんだろう。

なんて返事するんだろう?

心臓がドキドキ鳴ってうるさい。

あぁ、息まで苦しくなってきた。


「ふぅー…なるほどね〜。」


読み終わったのか、惣司郎がふうっと息を吐いた。


「桜」

「ぅえ!?」

「これって、真剣なやつなんだよな?」

「う、うん」

「そっか。」


何か考えるように空を仰いだ惣司郎。

あ、なんか今胸が苦しかった。


「お前の気持ちはよく分かった。」



時間が、


止まった。



あぁ、そっか、





惣司郎が


好きだったんだ。



惣司郎は私が好きな笑顔を向けた。


「俺はお前ならOKだよ。」

「…そ、そっか……って…ん?」


さっき、


『お前』って言った?


「あ…ごめん、言い忘れてたけど、それ私からじゃなくてナナからだから。」

「え?でもこれお前の名前書いてあるぞ?お前からだろ?」

「……はぁあぁっ??!」


ほらっ、と差し出した惣司郎の手から手紙を奪い取る。



********
惣司郎へ

私ずっと惣司郎のことが昔から好きだったの。

真剣に付き合ってください。

はぐらかしちゃダメだぞw

桜より
********



「なっ、なんじゃこりゃあ!?」

「おっ?懐かしいな、松田優●か?」


かっかっかっと笑う惣司郎に「ちがぁーう!!」と声を荒げる。

っていうか、確かに私の名前書いてある!

つーか、『はぐらかしちゃダメだぞw』って、真剣に付き合いたいって言ってるやつの台詞?!

もう、何が何だかわかんない。


とりあえず、


「はめられた!!!」

「ま…そうだろうな」


え?

驚いて惣司郎を見ると、窓に寄りかかった姿でにこやかに言われた。


「桜がそんな素直に気持ち打ち明けるはずねぇもんな。」

「…惣司郎?」

「で?どうするんだ?これから?」

「これから?」


ん?

そういえば、さっき惣司郎…


『俺はお前ならOKだよ。』


あれって、

私に対しての答えだったの…?

急に顔が熱くなって、心臓がバクバク言いだした。


「…なぁ、桜」

「…な、何?」


真直ぐ、惣司郎の顔が見れなくて、俯く。


「俺お前のこと好きなんだけど。真剣に。」

「っ…」

「お前は?この手紙に書いてあることは嘘なのか?」

「…じゃ…い…」

「ん?」

「…嘘じゃ…ない…」


あぁ、恥ずかしすぎて目に涙がたまってくるのがわかる。

ナナは気がついてたんだ。

私が惣司郎を好きだって。

幼馴染としてじゃなくて、一人の男として。


「私も…惣司郎のこと好きだもん…真剣に…」

「!」

「………」

「………」


ん?

あれ?

何で沈黙??

俯いていた顔を上げると、顔を赤くした惣司郎が、手で口元押さえていた。

あ、こいつ照れてる。


「ぷっ…あははは!惣司郎顔真っ赤!!あははは!」


思わず噴き出してしまうくらい、顔を赤らめた惣司郎はかわいかった。


「なっ、笑うなよ!こっちはお前の告白にときめいてんだからな!」

「はは…え?」


笑いも止まる爆弾発言。

今度は私が真っ赤じゃないか。

あぁ、不覚にも私もきゅんってしちゃったよ。

真っ赤になりながらもときめきが逃げないように、

私は惣司郎に抱きついた。



青春ラブレター



「うまくいったの?!よかった〜!いや、実は安形くんに頼まれてさぁ。」

「はぃいぃ?!しまった、さらにはめられてた!!!!」



*******

初安形。
まぁ…結果オーライってことで。


2010/07/23


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