テニスの王子様

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ドイツって遠いよね。


メールなら一瞬で届くけど、


やっぱり遠い。




そう愚痴を溢しかけた私が開いたメールには



『日本はもう春だな。桜は咲いているか?』



と書かれていた。





「…国光の嘘つき。『すぐに戻ってくる。』って言ったくせに。もう何ヵ月たったと思ってるのよ。」



呆れたような、どこか怒りを含んだ溜め息をつく私。




今までそばにいた彼氏の不在は、思いの他苦痛で、



世界の色が薄れたように思えていた。





『だいぶ暖かくなってきたよ。でも、まだ桜は咲いてない。』





国光がドイツに行くと言い出したのは、まだ雪が降っていた冬だった。



枯れたように細い枝を伸ばす桜の木の下で、国光は私に静かに言った。




『ドイツに行くことになった。』


『すぐに戻ってくる。』




私が『「すぐ」っていつ?あんまり待てないよ?』と涙を堪えながら言えば、


私の頭を優しく撫でながら『いつまでなら待っていてもらえるか?』と問われた。



私が出した答えは


『桜が咲くまでに』




国光は笑って


『ありがとう。必ず約束は守ろう。』


そう言って、国光はドイツへ行った。



メール着信音がして、はっと思い出の世界から引き戻される。



…国光は、あの約束を忘れてしまったのだろうか?




早く帰ってきてほしい、と

早く会いたい、と




思っているのは私だけなのだろうか。





メールを開いてみると、



『桜が咲くまでには必ず帰る。約束は守る。』




あ…約束、覚えててくれたの?



涙で潤んだ瞳が、闇で染められた窓の外を写す。



庭の桜の木は、明日にも蕾が綻びそうに膨らんでいる。





「…明日には、咲いちゃうよ、桜…」




間に合わなかったら死んじゃうわけじゃないんだけど、




約束を破ったことのない国光に、


一人で過ごす毎日に



不安と悲しみと怒りが募っていた。




『国光の嘘つき!桜、明日には咲いちゃうんだから』



我ながら大人げないと言うか、情けないと言うか。




涙ながらに打った本音を送ってしまった後で、ひどく後悔した。



いい彼女になれなくてごめん。


寂しがりやでごめんなさい。




すぐに返事が帰ってきて、びっくりして涙を拭いながらメールを見てみると、



そのメールは止まった涙を余計に溢れさせた。







『それはよかった。どうやら間に合ったみたいだな。』




私は部屋を飛び出した。




『今日本に帰ってきた。あの桜の下で待っている。』


夜の闇に包まれた世界に、色が挿した。




桜が咲いたら


君に会いに行こう、今すぐに




*****************


時期とか無視しちゃってください(爆)


アニメではドイツだったんですけど、原作は九州でしたね。



国光はかっこいいけど天然だろうからなぁー。


でもそんな天然な国光が好きです。


I Love Natural 9232!(黙れ)



080325



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