テニスの王子様
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一年は365日だけど、
今年は閏年であって、366日あるんだ。
そして今日がその1日多い、2月29日なわけで、
大好きな彼の誕生日なんだ。
正真正銘の気持ち
29日はオリンピックと同じで4年に一度しかないんだ。
この日が誕生日の人はいつも28日にお祝いしたり、3月1日にお祝いしてるわけだけど、
今年はその閏年!
つまり、正真正銘、誕生日の日にお祝いできるってわけ!
こんなチャンスを逃したら、彼女失格だわ!
…って言ってた昨日の自分が恨めしい。
現在2月29日 PM3:30
私の体温、38.5℃
ちなみに、私は今キッチンにいます…
あーもう!
なんでよりによって今日風邪ひいちゃったの、私!
ぜいぜいと上がる息を落ち着かせる暇などあるはずもなく、私は必死でメレンゲを泡立てている。
「ねぇ、一生懸命頑張ってるところに水注すようで悪いんだけど」
「なに?!今、私忙しいの!!後で遊んであげるから、カルピンと遊んでなさい、リョーマ!」
「いや、誰も遊んでとか言ってないし。泡立て器じゃなくてハンドミキサーで泡立てた方が早いんじゃない?」
ピタッ
「…ふっ、甘いわね、リョーマ」
私は不敵な笑みを浮かべながらかき混ぜていた泡立て器を、生意気で、でもかわいい弟のリョーマに向ける。
ピッとリョーマの鼻先にメレンゲが着いた。
「ぜーんぶ自分の力で作らなきゃダメなのよ!ハンドミキサー?そんな機械の力を利用したら、私の愛が伝わらないわ!邪道よ!」
なんて言いながら、私は再び泡立て器をかき回し始めた。
て言うか、正直な話、ハンドミキサーは思い付かなかったっ…!(爆)
んもぅ!急いでるのに!!
「口に出てるよ」
「ぎゃっ!」
べしっと、リョーマの掌が勢いよく私のおでこに当てられたかと思うと、急激な冷たさが私を襲う。
「熱あるんだから、大人しく寝とけばいいのに。」
「そういうわけには…だって今日は…」
「不二先輩の誕生日、でしょ?」
「不二先輩って幸せ者だよね。ま、無理しない程度にがんばれば。」と、ちょっと不貞腐れたような顔を浮かべながら、キッチンから出ていくリョーマ。
その後ろ姿を見ながら、これは弟なりの愛情表現なのだろうと、少し微笑んだ。
「さっ!早くしないと間に合わなくなっちゃう!」
袖を捲りながら、重い体を動かして、ケーキ作りを再開した。
―…
三時間後
「でっ、できたっ…!」
目の前には渾身の一撃…じゃなくて!
渾身の作品であるバースデーケーキが完成していた。
生クリームでデコレーションしたホールケーキには、赤い苺と「HappyBirthdaySyusuke」と書いたチョコレート板をトッピング。
我ながら、よくやった!
安堵と満足から体の力がふっと抜け、それと同時に私の体は床へと倒れかかった。
が
「大丈夫?」
優しく抱き止められて、衝撃を予測していた体を温かく包まれた。
「周…助?」
「熱が出たって越前に聞いて来てみたんだけど…」
「えっ!?」
「ダメじゃないか、寝てなきゃ」
「ごっ…ごめん。あ、あのね?」
熱があるからか、
それとも抱き締められているからか
理由が頭で考えられない程、私の体は熱くて、心臓はバクバクしている。
だって、一生懸命作ったプレゼントが完成した瞬間、私が大好きな彼が現れて、私を抱き締めて、しっかりしっかり抱き締められていて…
「無理、しないでよ。君に何かあったら僕は…」
彼がすごく心配そうな声で、私を抱き締めながらそう言うから、私は思わず「ごめんなさい」と謝った。
「…周助」
「うん?」
「誕生日、おめでとう」
プレゼントと言いながら、ケーキを見せると、彼はいつも以上に素敵な笑顔を浮かべながら、こう言うんだ。
「ありがとう」
君のその本当の、
正真正銘の笑顔が見れるなら、
私は何だってできるんだ。
正真正銘の誕生日は、正真正銘の愛を確認できた素敵な一日になり
素直に本当の気持ちを伝えられた不思議な一日でもあった。
この日だけは譲れません。
だって今日はあなたが生まれた、正真正銘の一日で
私があなたに正真正銘の気持ちを伝えられる一日です。
「生まれてきてくれて」
そして
「私を愛してくれてありがとう」
正真正銘の気持ち
不二くん、ハピバ!
080229
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