アイシールド21
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帰り道、
ふと目が惹き付けられたんだ。
ただ、それだけだ。
愛をこめて花束を
「ただいま」と言いながら自宅のドアを開くと、夕食の良い香りがした。
今日はビーフシチューかな?
そんな予測をたてる俺を、「おかえり!」と、愛しい彼女がパタパタと駆けながら笑顔で出迎える。
一緒に暮らし始めて長いけど、ユリアは今も昔も変わらず、俺を迎えに玄関まで来てくれる。
ユリアの「おかえり」が俺を癒してくれて、
その度に俺は、自分の幸せが確かにここにあることを実感する。
そんなことを考えていたら、彼女が「どうしたの?」と不思議そうな顔でこっちを見つめていることに気がつく。
「んー?何でもないよ。」
そう言いながら彼女の頭を優しく撫でた。
ちょっと嬉しそうな顔をする彼女を眺めながら、無意識の内に背後に隠してしまった自分の左手に意識が向かう。
「あ…そうだ、これ…」
「え?」
がさっと音をたてて、彼女の前に現れたそれは
「どう…したの?」
彼女を当惑させた。
「プレゼントだよ。」
「え?でもっ…」
「でも?」
彼女の顔から笑顔は消えている。
ただ、ただ、目を白黒させながら、俺と俺の持つそれを交互に見つめている。
「だって…今日は誕生日じゃないよ?」
「うん、そうだね」
「今日は…記念日でもないよね?」
「うん、そうなんだよね」
「でも…じゃあ、何で?」
何で?って聞かれても、俺も困ってしまう。
これを今贈る理由は特に無いから。
ただ、目をひかれたんだ。
あの時みたいに。
「何もない日にプレゼントしちゃいけなかったかい?」
相変わらず固まってるユリアにそう言うと、彼女は頭をふるふると一生懸命左右に振って、そして漸く受け取った。
真っ赤な薔薇の花束。
「赤い…薔薇」
「うん。嫌いだったかな?」
そう問いかければ、再び頭を左右に振り、否定を体で表現した彼女。
ぎゅっと花束を抱いて、俯いてしまった。
「…ユリア」
名前を呼ぶが、彼女は頭を上げない。
初めて俺と会った日のこと覚えてる?
俺は今でも昨日のことのように覚えてるよ。
初めてユリアに会って、俺の瞳には君しか写らなくなっていた。
誰ともなく呼ばれた気がして、振り向いた先に君がいた。
そして、果てしなく惹かれたんだ。
だから、今日
何気なく目をやった花屋の軒先で、仄かに露で光る真紅のそれが、自分を呼んでたみたいで。
それと同時に、ユリアと自分が出逢ったのも奇跡ではなく、運命であったと感じた気がして。
惹き付けられたんだよ、俺は。
ユリアと初めて出逢った時みたいに。
「…ありがとう、ユリア」
「え?」
「ん?俺の側にいてくれてありがとう」
笑われるかなって思ったけど、
漸く顔をあげた彼女は、泣いていて
今度は俺が困惑してしまう。
迷惑だったかな?
そんなことが頭を掠めた時、
「ありがとう、紫苑」
泣きじゃくりながら花束を抱く彼女にそう言われた。
「私も幸せだよ。だから…」
だから、これからもずっと、側にいて。
俺はただ彼女を抱き寄せて、そして「うん」と答えた。
そして固い意志を口にするんだ。
「愛してるよ、ユリア。今までも、これからも、ずっと。」
大袈裟だけど受け取って
理由なんて聞かないで
愛をこめて花束を
君を好きなことに理由なんていらないんだから。
Image Song 『愛をこめて花束を』By Superfly
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最近じわじわキッドにはまりつつあります。
髭好きじゃないけど、なんかキッドなら許せる…!
しかし高校生には見えないなぁー(爆)
『愛をこめて花束を』(Superfly)は、いい曲だなぁ〜って思って聞いてた時にキッドが頭に浮かび、書いた次第です。
うーん、もう少しすっきり纏まるはずだったはず(ぉぃ)
ちなみに
28巻でキッドが倒れた時、チアの女の子たちと一緒に「ぎゃあぁあっ!!(泣)」と叫ぶくらい、キッド好きです、私(どうでもいい)
080229
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