アイシールド21
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「え?進と長谷川くんって幼馴染なのかい?」
「はい。」
「へー…意外だな。」
意外、と言われることが意外だった過去は、もう今は存在しない。
高校2年になった今では、私と彼が当たり前のように幼馴染として認識されていた環境はなくなっていた。
それくらい私と彼の距離は離れていた。
破壊神と創造主
ACT.3 -私の知らないあなた-
「でも納得したよ。進がきみを紹介してくれた時、どういう繋がりなんだろうと驚いたけど…まさか幼馴染だったとは…」
「知らなかったよ」と笑う高見さんの隣を歩く私は複雑な心境だった。
「あの…私に見てほしいものって…?」
「ん?あぁ、シューティングマシンなんだ。まだそんなに古くはないんだけど、どうにも調子が悪くて……ここにあるんだが…」
ガラリと横開きの戸を開けると、屋内練習場の中には問題のマシンとその横に立つ二人の部員。
「あ、長谷川さん!」
「えっと……桜庭くん…だったよね?」
「うん…やっと覚えてくれたんだね…」
「ご、ごめん…」
彼、桜庭くんはその高い背を少し屈めて、困ったように笑った。
クラスが一度も一緒になったことのない彼のことを知ったのは、昨年の秋。
文化祭で進が私の作品展示に桜庭くんを連れて来た時のことだ。
あの時、桜庭くんのことを知らなかった私はなぜか桜庭くんに喜ばれた…
それから何度か声をかけられたにも関わらず、なかなか名前を覚えることができなかった。
初めはなぜか喜んでいた桜庭くんだったか、次第に私に名前を覚えているか確認してくるようになった。
アイドルをしていると聞いたし、私が名前を覚えないことに知名度的な不安を覚えたのだろう。
「驚いた!桜庭に興味のない女子もいたんだな…」
「すみません…私あまりテレビとか見なくて…あと、人の名前とか覚えるの苦手で…」
「気にすることはないさ。それにしてもいろいろ意外だな。…桜庭が熱心になるわけだ。」
「た、高見さん!!!」
眼鏡を上げながら笑う高見さんに、桜庭君が慌てたように声を荒げる。
どういう意味かわからず背の高い二人を見上げていると、それより少し低い位置からこちらを真直ぐに見つめる視線と目があった。
「ユリア、すまん。」
「清十郎…ううん、いいよ。」
私は早速マシンの横に立つと、高見さんが持ってくれていた工具箱を受け取りマシンの心臓部を開けた。
数分弄ってみた結果、どうやら部品の一部が欠けていることが原因だとわかった。
「これならすぐ直せると思います。このサイズの部品なら知り合いの工場から譲ってもらえると思うので、それさえあれば明日にでも使えるようになります。」
「本当か?いやー、助かるよ!」
「…いつもの工場か?」
「え?あぁ、うん、そう。あの機械整備工場。この間スクラップ品の部品もらえるって話だったから、多分もらえるはず。」
「ならば俺が今日の帰りに受け取ってこよう。」
「え…いいよ、私が行くよ。」
「帰り道だ。俺がアメフト部の代表として行く。」
「うーん…でも、直接見ないとサイズわかんないし…」
「じゃあ二人で行ったらどうだい?」
高見さんが微笑みながらそう言って、私と進は一斉に高見さんを見上げた。
「ん?だって二人とも帰り道だろ?」
もっともな意見に私と清十郎は顔を見合わせた。
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