アイシールド21
□2
1ページ/2ページ
アメリカって遠いのだろうか。
そんな子供のような疑問を頭に浮かべて、地図をぼんやり眺める。
テカテカとした紙の上に指を滑らせ、日本とアメリカに見えない線を引いてみる。
地図上ではそんなに感じない距離も、実際ではかなり離れているわけで、
それをわかっていながらも距離を考えてしまうのは、
彼のあんな顔を見てしまったからだろう。
破壊神と創造主
ACT.2 -幼馴染みとして-
思えば、いつでも私たちは一緒にいた。
彼はテレビゲームには興味がなく、しかも触れれば必ず壊してしまうから、私はいつも彼と一緒に公園で遊んだりトランプや将棋をして遊んでいた。
ある時、彼がうっかり触れてしまうまで。
彼が他の友達のゲーム機にうっかり触れてしまったあの日まで。
弁償しようにも小学生の手に負える代物でないそれを見て、幼馴染みとしてどうにかしなきゃと思った私はそれを修理することにした。
幸い外のカバーには傷はなく、ボタンが効かなくなっているだけのようだった。
ネジを外し、カバーを開ければ見たことのない機械がコードに繋がれていて、どうしようもない不安にかられた。
しかし、あれやこれやと慎重に弄ってみれば不思議に直ってしまい、事なきを得たのだ。
それを父親に言えば、父親はどこかから壊れた玩具のラジコンを持ってきて、好きにいじっていいと私にくれた。
理屈などわからなかったはずなのに、幼い私はそれを直してしまった。
不思議な感覚だった。
今までにない楽しさがあった。
私は機械にハマってしまい、もっと学びたいと思った。
それからは父は私にいろんな材料を与えてくれた。
壊れた玩具、電化製品、車の部品…
私は機械いじりが趣味の父に教わりながら趣味として機械に触れていた。
夏休みの宿題で工作が課せられ、機械仕掛けの貯金箱を作った。
招き猫の前にコインを置くと、猫が腕を伸ばしコインを穴へと落とすという仕掛けの物だった。
周りが紙や粘土で作った作品の中、私の作品は突出し過ぎていて、中には「本当にお前が作ったのか?」と疑う者もいた。
そして、それをいつも証言してくれるのが彼…進清十郎だった。
正直で誠実な彼が、静かに、しかし力を込めて、私がいかに努力したか、どんな怪我を負いながら作って、どこにどう工夫をしたかと、熱く言葉を連ねるのだ。
あまり饒舌でない彼の言葉に、皆納得せざるを得なかった。
中学生の時、ロボットコンクールがあり、それに一人で作った作品を提出した。
もはや、私の知識と腕は父の機械いじりの域を越えていた。
それが最優秀賞を獲り、私はその手の人々の間で一躍有名になった。
女の子の友達は少なく、男の子ばかりが周りに集まってきた。
女の子はファッションや恋愛に忙しいようで、その手にあまり関心がわかない私との距離を取るのは当然だった。
かと言って男の子たちが私と機械の話をするのにも問題はあった。彼らに詳しい話をしたところで真に理解できる人はいなかった。
もちろん、清十郎もその一人だった。
けれども彼は私と常に一緒にいた。
私が機械いじりに集中している時は、邪魔しないようにと気遣ってくれていたのか、私の飼っていた犬のシロを散歩へと連れていってくれた。
そんな毎日が続いて、私と清十郎が一緒に遊ぶ時間は次第に少なくなっていった。
彼が私に壊れた機械を持ってくるようになったのは、それからそう遠くなかった。
電卓にリモコン、腕時計に目覚まし時計。
今まで壊れなかった日常家電まで壊れだしたことに疑問を抱いた。
でも、彼の身体の成長を見れば、握力の変化と共に破壊力も上がったものだと変に納得してしまったのだ。
→