アイシールド21

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思えば、幼い頃から彼と私の役割は常に定められていて、

それを疑問に思うことなんか今までなかった。


彼は一見普通の子供だったがどうにも機械との相性が悪く、機械に少しでも触れよう物なら元気に働いていたそれは突然沈黙してしまうのだ。

いわゆる機械音痴だが、正直そう呼べる域はとうの昔に超えてしまったように感じる。

彼にはもちろん悪気は無いし、それを私も十分理解しているつもりだったから今の今まで何の疑問にも思わなかったのだろう。


そしていつかそれを疑問に思う日が来るとは、思いもよらなかった。




破壊神と創造主
ACT.1 -カウントダウン-




「…壊れた」

「…また?」


分厚く透明なゴーグルを目の前から額へとあげて、扉の入り口で佇む彼に問いかければ、彼は「そうだ」とでも言うように無言でこくりと頷いた。


「…貸して」


私は思わずため息をついて椅子から立ち上がると入り口へと歩みより、彼からそれを貰おうと右手を差し出した。

黙ったままそれを私の手に置いた彼は、幼い頃に比べしっかりとした体つきになり、背も私を遥かに超えてしまった。

けれど、私と彼の関係は相も変わらず幼い頃から一緒だった。


家は隣同士。

幼稚園から小中高と同じ学校に通っている。

所謂『幼馴染』だと思う。


彼が男で私が女だということ以外で私たちが極端に異なるのはそれぞれの才能だ。

彼はスポーツで才能を開花させ、今ではアメフト界の期待の選手。努力する天才だと謳われ、この春からは王城大学への進学が決定している。


片や、私は根っからのインドア派で、機械いじりが趣味な変わった少女だったが、あるコンクールで優勝してからその道に目覚め、9月からは工学を勉強するためにアメリカの大学に入学する。

入学は9月なんだけど、向こうの環境に慣れないといけないし、向こうでの下宿先は私の叔父の家で「いつからでもいいよ」と言ってもらえたので、好意に甘えて一週間後に出発することにした。


…一週間後か。


アメリカでの生活に若干の不安はあるものの、身内もいるし、大好きな工学を勉強できることの喜びの方が勝っていて、楽しみにしていた。

そのはずだったのに、ここ最近の私はどうにもおかしいようで、自宅の庭に造られたラボと呼ぶ個室に籠っては機械いじりに没頭し、アメリカのことは頭の隅に追いやっていたようだ。

今作っているものは、昔から研究してきたももので、どうしてもアメリカに行く前に作らなければならなかった。

何度か完成はしたのだが、すべて思ったほどの成果を出すことはできなかったため、改良に改良を重ねている最中だ。


早く完成させないと…


そう思うと胸がズキリと疼いた気がした。





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