BLUE LINE

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調理実習でクッキーをたくさん作ったけど、隣のクラスの御幸も倉持もクッキー好きなイメージなかったから、たまたま通りがかった1年の沢村くんにあげてしまった。

クッキーを小分けにした袋をいくつか渡して、他の1年生と一緒に食べてねと言ったら、「ありがたき幸せ!女神のおおせのままに!」って叫ばれてしまって、恥ずかしくって逃げるように2年のフロアに戻ってきたところだった。
沢村くんには廊下や教室で叫ばないようによく言っておかないと。

そう思いながらも、野球部のマネージャーとしての職務を果たすべく訪れた2年B組ではクッキーを持ってないと告げたことで理不尽にがっかりされている。
ゾノ君風に言わせてもらえば、これはそう、『なんでやねん』
盛大にため息をついた御幸の後頭部を見ながら、ふと思った疑問を口にする。

「てか、御幸なら他の女子からもらえるんじゃ…」
「はぁ〜お前はわかってねぇな〜」

わかってないって…何を?

「えっ…もしかして、御幸って人見知りで野球部以外と話せないとか…?」
「こらこら、何かわいそうな人を見る目をしてんだ」

だって、モテるなら他の女の子からもらえばいいんじゃないの…?
大体、クッキーとか甘いものが好きだなんて聞いたことないけど…
あ、でも今年のバレンタインはチョコ食べてたな。
催促されて作ったチョコを渡せば、先輩たちに食われるからと言ってペロリと平らげた御幸と倉持を思い出した。

「って、それクッキーじゃねぇの?」

体の後ろに半ば隠すように持っていた紙袋を指されて、はっと現実に引き戻される。

「…さすが、目ざといね?」
「それが取り柄なもんで?」

にやっと笑った御幸は、再度手のひらを差し出した。

「それとも…それって隠してた?」
「別に隠してないけど…うーん、まぁいっか。はい、どうぞ」
「…マジでもらってもいいの?」
「いいよ。そんな風に楽しみにしてもらってたなら御幸たちに食べてほしいし」
「ははっ…じゃあ、一緒に食うか。俺のコーヒーを一口飲ませてやるよ」
「いや、私は食べなくてもいいんだけど…」
「おっ!紗良来てんじゃん!クッキーよこせよ!」
「倉持、それ、カツアゲ」
「ヒャハハ!そう言うなって!ほら、オレンジジュース買ってきたぜ」
「えっ、いいの?」
「気前いいじゃん、倉持」
「安心しろ、御幸の奢りだ」
「それならありがたく」
「ちょっと待て」
「よーし、食おうぜ!」



みんなでクッキーをサクサクしました



「ん、うまっ!」
「ヒャハハ!小腹好いてる時にはちょうどいい甘さだな!」
「そう?よかった」
「…なぁ、これ、本当は誰かにやる予定だったんじゃねぇの?」
「ん?あぁ…3年の先輩たち」
「「…はっ?」」
「調理実習があると教室に来て寄越せって言われるから、今回も念のために包んでたの…まぁ、今回は調理実習のこと言ってないし、大丈夫でしょ」
「「……」」
「ん?ど、どうしたの二人とも?顔色悪いよ!?喉に詰まった?!」
「「な、なんでもねぇ…(ばれたらやばいな…)」」




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2016/05/09




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