RKRN OTHER

□◆
1ページ/1ページ







拝啓、木下先生

お元気ですか。

実は今日はご報告がありお手紙差し上げました。

私…―




封を開けて、昔と変わらぬ字を見て、

懐かしいと、頬が緩んだ。


だから、

この手紙を最後まで読んで、

涙が流れたのは、

懐かしさからだと、信じたかった。





私、嫁ぐことが決まりました。





昔、生徒だった彼女が自分のことが好きだと言った時、

自分はどんな顔をしたのだろう。

今では思い出せない。


思い出すのは、彼女の真っ赤な顔と、泣きそうな瞳。

そして自分の言った言葉。



「お前は…儂の自慢の生徒だ。」



くのいち教室の生徒ながら、生物委員会の仕事を何年も手伝ってくれた。

兎をそっと撫でる姿や、墓を作りながら涙を流す姿、

積んだ花をたくさん抱え微笑む姿、

「先生のように立派な忍になりたい」と夢を語った姿が、

走馬灯のように駆け巡った。


彼女の瞳から、何かが落ちて、地面に消えた。


「…はい。先生。」


彼女は笑った。

それは綺麗に。



「卒業したら…」

「え?」

「……いや…卒業したら、どうするんだ?」

「…家業の反物屋を継ぐつもりです。」

「そうか…」

「先生…」

「なんだ?」

「…お元気で」



そう言って、彼女は俺に背を向けた。



あの時、




「卒業したら、儂のところに来ないか」




そう告げていれば、今この後悔はないのだろうか。


あの時と同じように桜の花弁が空に舞い、暖かい風が頬を撫でた。




君を忘れない




彼女の瞳からこぼれ落ちた涙の美しさを、


生涯忘れることはないだろう。






******

なぜか突然木下先生への熱が高まりました…

でも本当は違う話を書くはずだったのに…出来上がったらまったく違う切ない話になってしまった(^q^)

次回はハッピーエンド目指します…きっと←




[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ