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久々に恋人のところに来てみたというのに


「…あの、小百合…さん?」

「………」


呼びかけてみるものの、彼女は私に背を向けたままである。


どうしてこうなった?


ええっと…私は何かしてしまっただろうか?


マイタケ城とナルト城の合戦の視察に行った次の日の夕暮。

恋人である小百合のところを訪れてみれば、彼女は家に上げてくれたものの、まったくこちらを見てくれない。


これは確実に…怒っている。


最近仕事ばかりしていたからだろうか?

それでも文はよく出していたし、仕事の合間を縫っては会いに来ていた。


「小百合…」

「……」

「…何か気に障ることをしてしまったかな?」

「……」


彼女の後姿は凛としていてまっすぐだ。

それが美しくもあり、今は恐ろしくもある。


いつもであれば、私が来れば白い頬を桜色に染めて喜んでくれる彼女が、

今は私に背を向けて口もきいてくれない。

これは初めての事態だ。

嫌な汗が流れる。


心当たりなど、ない。

しかし、小百合がわけもなくこんな態度を取るはずはない。

よって、私が何かしてしまったのだろう。


「その…何を怒っているのかわからないのだが…」

「………」

「小百合……」


だめだ、泣きたくなってきた…


小百合に嫌われてしまったのだろうか。

正座した膝に乗せた手に力が籠る。


「…今朝…」

「え!?」


突然彼女が口を開いたので、過剰に反応してしまった。


「今朝…学園に用があって行ったのですが…」

「学園?忍術学園に?」

「…そこでくのいち教室の生徒たちが騒いでいました。『憧れの利吉さんにサインをいただいた』と…」

「…あ!!」


そうだ!


昨日合戦場見学に来ていたくのいち教室の生徒たちにサインをしてやった。

たまたま居合わせただけだし、サインをしてやっただけだ。


「違うんだ小百合、あれはたまたま…!!」

「事情はくのいち教室の生徒たちから聞きました。お仕事中にも関わらず優しく接していただけたと。」


小百合は真面目で堅実だ。

彼女は私の誠実なところが好きだと言っていた。

仕事中にそんな気を抜いたようなことをして、と咎められるのではないだろうか。

いや、咎められるだけならまだいい。

不真面目だと、そんな人は嫌いだと、

彼女が私を拒む姿を想像しただけで、胸が嫌な動悸に襲われる。


「小百合…す、すまない!」

「え?」


私はがばりと頭を下げた。

それに驚いた小百合がこちらを振り向いた気配がする。


「決して仕事を軽んじていたわけではないんだ!!」

「…仕事?」

「え?」

「え?」


奇妙な沈黙が流れる。

やっと絡んだ視線が離せない。


「利吉さんは仕事頑張っているじゃないですか。」


きょとんとした彼女の瞳に映った自分の顔は、なんとも情けないものだった。


「ただ…利吉さんは女性に人気があるなと思っただけです。」


そう彼女は言うと、再び私に背を向けてしまった。


「彼女たち、すごく嬉しそうでしたよ。」


あ…

小さく口が開き、声が漏れた。


彼女の後ろ姿はとても小さく、寂しさを物語っていた。

どうしようもない罪悪感が胸を締め付ける。

私は小百合の背を後ろから優しく抱き締めた。


「小百合、すまない…」

「…どうして謝るんです?利吉さんは何も悪いことをしていないのに。」


彼女の声が乾いた笑みを含んでいる。

俯けられた顔からは彼女が今どんな表情をしているかは見えない。

けれど、きっと悲しい顔をしているのだろう。


「小百合、すまない。私が軽率な行動を取ったばかりに…小百合に寂しい思いをさせてしまって…」


天才だの、カリスマだの、私は周りからの賛辞に驕っていたのだ。

今の自分があるのは、自分を支えてくれている小百合あってのものなのに…


小百合と恋仲であることを周囲に隠していた。

仕事の都合上、忍術学園に出入りする彼女に精神的負担をかけたくないという思いからだった。

彼女もまたそれを望んでいると思っていた。


「利吉さんは素敵な人だから…性別を問わず人気があるのは重々承知しております。そんなあなたに惹かれたのは誰でもない私です。」


「だから謝らないで」と言いながら私の腕を優しく触れる小百合。


「あなたのことが好きすぎて、嫉妬してしまうんです。こんな心の狭い私ですが…嫌わないでくださいね。」


彼女の切なげな笑顔を見て、私は口を開いた。


「小百合…」

「はい?」

「結婚しよう」

「…は?」

「他の誰に慕われようと、私が愛しているのは小百合だけだ。だから、私を小百合の婿にしてくれ。」


後ろからきつく抱き締めたままそう言えば、彼女の白い肌がみるみる赤く染まる様が見えた。

しばらく沈黙が流れ、返事がないことに若干の焦りが生じる。


「…小百合…ダメか?嫌だったら断ってくれても…」

「…利吉さん…」

「ん?」

「利吉さんは…やっぱりずるいです…」

「え?」

「利吉さんのことが好きで仕方ない私が…断れるはずないじゃないですか」


そう言った小百合は潤んだ瞳をこちらに向けて優しく微笑んだ。




どうしてこうなった?

あなたのことが好きで好きでたまらないから




私は笑顔を浮かべ、小百合を正面から抱きしめた。







*****


初利吉夢…アニメの『私の背中に…の段』を見たらいつの間にか出来上がってた作品。

今、自分が一番驚いてます\(^o^)/オチナシヤマナシ!




2011/07/03



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