RKRN 5年

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※現パロ・社会人設定





12月1日

彼から電話がかかり、24日の予定を聞かれた。
「特に予定はない」と答えると「じゃあ、その日は空けといて」と言われた。
「わかった」と言い、電話を切った。



12月15日

彼から電話がかかり、クリスマスに何をしたいか聞かれた。
「何でもいいよ」と言えば「何でもいいのか…迷うなぁ」と苦笑いが返ってきた。
「じゃあ、前に千雪が行きたがってたお店にしようか。予約しとくな。」と言われた。
「わかった」と言い、電話を切った。
そういえば、もう一年前ぐらいにそんなこともあったな、と何も予定を書き込んでいないカレンダーを見つめながら思った。



12月20日

彼から電話がかかり、24日は仕事が終わるのが遅くなりそうだから、お店をキャンセルしたと言われた。
「別にいいよ」と言えば「別の日にした方がいい?」と聞かれた。
「ううん、24日でいいよ。私が家でご飯作るよ」と言えば「本当に!?いいのか?」と大げさに驚かれた。
「うん、いいよ」と言えば「よっしゃぁ!」と喜びの声が聞こえた。
思わず笑みをこぼしながら「何が食べたい?」と聞けば「何でも!千雪の料理は何でもうまいからな!…あ、でも簡単な物でいいからな」と慌てて言われた。
「わかった。期待せずに待ってて」と言い、電話を切った。



12月22日

彼のプレゼントを買いに行った。
似合いそうなジャケットがあったので、ちょっと高かったけどそれにした。
デパートを出ようとすると、ジュエリーショップのショーウィンドウが目に入り、足を止めて覗きこんでみた。
一か月前ぐらいに見た時にあった可愛い指輪がなくなっていた。きっとどこかの誰かがクリスマスのために買っていったのだろう。
指輪をもらった女性の幸せを祈り、胸が苦しくなるのを抑えた。



12月23日

本屋に行き、料理本をパラパラ立ち読みさせてもらった。
いくつかのレシピを見て、明日の料理の構成を考えながら、クリスマス用レシピの載った料理本を一冊購入した。
その後近所のスーパーに寄り、食材を購入する。
明日は彼の好きなハンバーグにしよう。サラダと、あとビーフシチューに照り焼きチキン。
帰り道、クリスマスムードで彩られたケーキ屋さんの前で足を止めた。
「あ、ケーキ…」
どうしようかと少し迷ったが、明日は朝から休みだし久々に手作りするかと、重い買い物袋を握り直し、帰路に着いた。



12月24日

朝から料理の仕込みをし、久々にケーキを作った。
スポンジがうまく焼け、ほっとした。
部屋を掃除して、昼過ぎから冷ましたスポンジにデコレーションをした。
デコレーションにてこずりながらも、なんとか完成させ、冷蔵庫に入れた。
夕方から料理作り。ビーフシチューを作り、煮込んでいる間にハンバーグを作る。仕込んでいたチキンの様子を見る。サラダを盛り付け、あとはチキンとハンバーグを焼くだけだ。



「…そういえば、何時に来るんだろう?」


朝からバタバタしていて、忘れていた。

数日前の電話では遅くなるとは聞いてたから、きっと21時を過ぎるんだろうと思ってたけど…。

時計を見るともう19時を過ぎている。

携帯を開いてみると、彼からのメールが着ていた。


『ごめん、仕事長引きそう。先に飯食っててもいいから。』


「そっか…」

メールの返信を打つ。


『大丈夫。仕事終わったら連絡して。』


指が止まる。

少し考えて『仕事頑張ってね。』と付け加えた。

決定ボタンを押し、メールを送信して、すぐに携帯を閉じた。

20時になって、21時になって。

気晴らしにつけたテレビにはイルミネーションの中継や、クリスマス特別番組が放送されている。

楽しげな音楽や映像がテレビに映るけど、それを見ている私の心は明るくならない。

料理を仕上げに入る。ハンバーグを焼いて、チキンを焼いて…

後は彼が帰ってきたら、すぐに食べれるようにした。

それでも彼は帰って来ない。

時間はもうすぐ0時を回る。

流しっぱなしのテレビからはおなじみのクリスマスソングが流れている。

きっと、君はこない…

そう流れる曲に自分の気持ちがシンクロする。

きっと、彼は今日は来ない。

来ないんじゃない、来れないんだ。

わかっているのに、胸が苦しくて、涙がこぼれそうになった。


「どうして…なんだろうなぁ」


わがまま言いたくない。


『クリスマスプレゼント、何が欲しい?』

『…何でもいいよ。欲しい物ないし、気にしないで。』


嘘だよ、本当は欲しい物があったよ。

瞳を閉じた瞬間、携帯がオルゴールの音を奏で始めた。

びくりと肩を震わせて、携帯を握れば、彼からの電話だった。

涙を拭い電話に出れば、彼の声が聞こえた。


『もしもし、千雪…?』


若干息切れしたような彼の声。

きっと慌てて電話してくれたんだろう。


「うん…仕事終わった?」

『あぁ、遅くなってごめん。でも…今日はもう会いに行けそうにないんだ。』


ひゅっと、吸い込んだ息が喉に詰まった。


「そっ…か。」


そう言って、大丈夫だよ、と続けようとしたが、声にならなかった。


『千雪?』

「…だ」

『え?』

「嫌だよ」

『千雪?』


あぁ、どうしよう、止まらない。

わがまま言いたくないのに、困らせたくないのに…


「会えないなんて嫌だよ…ハチに…会いたいよ…」


涙がぽたぽた粒を成してテーブルに落ちて行く。


『…千雪』


静かに彼が、ハチが、私の名前を呼んだ…


「っ…ごめ…」


鼻をすすりながら謝ろうとしたら、彼がそれを遮った。


『ははっ!やっと言ってくれた!』

「…え?」


彼の言ってることがわからなくて、涙が止まった。


『よかったー…俺もう呆れられて嫌われてるんだと思った…』


ハチの声はとても嬉しそうで、少し自嘲するように、安堵するようにそう言った。


「ハチ…」

『…でも、ごめん。今日は行けないんだ…』

「っ…」


やっぱり、わがまま何て言うもんじゃない。

ハチを困らせたくない。

ハチが好きだから、嫌われたくないから、だから今まで我慢してたのに。

わがまま言って、挙句に自分で傷ついて…


「っ…ごめ…私…わがまま言ってごめ…」

『わがまま?どこが?』


ハチが驚いた声を上げる。


「だって…」

『会いたいっていうのはわがままじゃないだろ?』

「でも…ハチ、今日来れないのに…」

『今日は、な?』

「え…?」


頭の中が疑問符で埋まって、言葉に詰まった。

その瞬間、インターフォンがけたたましく鳴った。


「え?」

『ごめんな、24日に間に合わなくて…25日になっちまった』


時計を見れば、0時を回っていて、確かに24日は終わっていた。

私は慌てて電話を持ったまま玄関に行き、ドアを開けた。

すると外にはハチがいた。

手にはとても大きなバラの花束を抱えていた。


『「千雪はもっとわがまま言っていいんだぞ?」』


携帯電話から聞こえる声と目の前のハチが発する声が重なる。

私は電話を耳から離し、ハチの胸に飛び込んだ。





きみと私の25日間




「はい、これ、プレゼント。」


渡されたのは大きなバラの花束。


そして、


「開けてみて」


小さな箱。


深紅のリボンをほどき、箱を開けてみると、

誰かに買われていったはずの、あの素敵な指輪が輝いていた。


「これ…」


戸惑っている私の手から箱をひょいと奪うと、ハチは指輪を取りだし、私の薬指にはめた。


「これからは寂しい思いさせないから」


照れたように頬を染め、にかっと笑うハチ。

大好きなハチの笑顔が涙で滲んで見えなくなる。


「俺と結婚してください。」


ハチの腕が私を抱き締めた。

私はただ、ただ、彼の胸で嬉し涙を流した。



会いたいが募った25日目は、とても幸せな1日になりました。





************


慌ててあげたら、肝心な部分が入ってなかったので修正しましたー!修正前を読んでくださった方すみません…!!

ハチは獣医か警察官なイメージで書いてみました。

忙しくて中々会えない彼と、会いたいけど我慢してた千雪さん。

ハチも千雪さんも本当はすごくお互いのこと好きなんです。


2011/12/25


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