RKRN 5年

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※現パロ・社会人設定





「俺がどうして怒ってるのか、わかってる?」


静かに、でも怒気を孕んだ言葉をぶつける私の彼氏は、

今すっごくいい笑顔をしている。


わかってる…怒ってるんだよね。


寒空の下、しゅんと肩を落として小さくなる私に、それを更に押さえつけるような沈黙が襲ってくる。


「電話にも出ないし、メールも返さないし…挙句にこんな遅くに街中で鉢屋といるとか…俺に喧嘩売ってるの鉢屋?」


私の隣で小さくなっていた三郎がビクリと肩を震わせた。

怒りの矛先が私だけでなく、一緒にいた三郎にまで向いてしまった。

三郎、ごめん…


私の彼、尾浜勘右衛門は普段あんまり怒る方ではなく、だからこそ今の彼はとても恐ろしい。

なんせ怒りに反して笑顔だ。もちろん目は笑ってない。


「勘右衛門、誤解だ。俺は間違ってもこいつに手をだしたりしない!こいつはただの幼馴染だし、俺にはこいつと違って美人でスタイル抜群の彼女が…むごっ!」

「ねぇ三郎、幼馴染だからって言っていいこと悪いことあるよね?ね?」


無意識に私の右手が三郎の顎を掴んだ。

三郎の彼女は私の友人でもある。

確かに彼女は私より美人だし、身長も高くてスタイルもいいけど…のろけと同時に貶されるのは許せない。


「ちょ、待っ、千雪、悪かった…!!」

「ふん…わかればいいのよ!」


冷たくなった鉢屋の顔から手を離せば、相変わらずにこにことした勘右衛門のことを思い出し、慌てて弁解を始めた。


「違うの、勘ちゃん。買い物してたらたまたま三郎に会って!アドバイスが欲しかったから付き合ってもらったの。連絡しなかったのは…携帯の充電切れちゃって…ご、ごめんね。」


今日は勘ちゃん仕事遅くなるんだと思ってたから…今から帰れば大丈夫だと思ってたんだけど…抜かった。


「買い物?…何が欲しかったの?」

「えっ?!あ、いや、それは…」


い、言えない…っ


「えっと…その…」

「…ふーん?言えないんだ?」


勘右衛門の語気が一気に暗くなった。


やばい、お怒りですね!!


だらだらと冷や汗をかく私と三郎はどうしようかと視線を泳がせる。


「あ、三郎と千雪ちゃん!!こんなとこにいたんだー」

「あ、雷蔵くん!!」

「あれ?勘右衛門?どうしてここに?」

「雷蔵こそ…」

「え?僕は三郎と千雪ちゃんと買い物してたんだけど…」

「…ってことは…」

「お前の勘違いってことだよ、勘右衛門。俺が雷蔵と買い物してたら、千雪とばったり会って、一緒に買い物してただけだよ。」


勘ちゃんは驚いた顔をしている。

三郎と二人っきりだったと思い込んでたんだよね。

私たちも今日の買い物の理由がばれないか心配で、雷蔵くんとはぐれたこと忘れてた…

ごめん…雷蔵くん…


「そっか…ごめん。」


勘ちゃんは気まずそうに三郎と私を見て謝った。


「ううん…ごめんね勘ちゃん。あと、三郎も。」

「まぁ、別にいいけど…ていうか俺はついでかよ。」

「三郎、僕たちはもう行こうか?」

「あぁ、そうだな…じゃ、俺と雷蔵はもう行くから、二人で仲良く帰るんだぞ。」

雷蔵くんと三郎が背を向けて少し歩いた。

二人の吐く息が黒い空にはっきり映った。

もう夜も遅い。

そう思いながら見つめていると、少し離れた所で三郎が振り向いた。


「勘右衛門!」

「何?」

「お前、千雪のことになると周り見えなくなりすぎ!」

「知ってるよ!」

「知ってんのかよ!!…そいつのこと叱るなよ!」


そう言って笑うと、三郎は手を軽く振って、雷蔵と人ごみの中に消えて行った。

ざわめく街中で、私と勘ちゃんは流れに飲まれることなく、イルミネーションで飾られた街路樹の側に立ち尽くしていた。


こっ…

これからどうしよう!!!


「……千雪」

「はいっ!?」

「何買ったの?」


直球きたーーーー!!


でも、もう隠せないし、隠しても勘ちゃん納得してくれないんだろうし…


「これ…」


手に持っていた、紺色の紙袋を差し出す。


「これって…」

「勘ちゃんに…クリスマスプレゼント…私一人じゃ悩んで決められなかったから、三郎と雷蔵くんのアドバイスもらって決めたの…ごめんね。」


恐る恐る顔を上げてみると、勘ちゃんはとっても切なそうな顔をしていた。


ブランド名のロゴが書かれた紙袋。

ひょっとして勘ちゃんこのブランド好きじゃなかったのかな…

でも中身は三人で選んで、勘ちゃんに似合いそうなニットの帽子とマフラー選んだんだ。

きっと気に入ってくれるって、思ってたのにな…

急に悲しくなって、また顔を俯けてしまった。

すると、急に体が引っ張られた。


「えっ!?か、勘ちゃん?」


勘ちゃんが私を抱きしめている。

冷えたコートが頬に当たる。

でもここは街中で、人もたくさんいて、


すれ違う人たちの好奇の視線が突き刺さる。


「ごめん、千雪。俺心配で…」

「…うん」

「プレゼントは嬉しい。けど、俺は千雪がいてくれればそれだけでいいんだ…」


「だから」と言った後、勘ちゃんは黙って私を抱き締める腕に力を込めた…





ONLY YOU




「千雪だけしかいらないから」


「勘ちゃん、ごめんね。私も勘ちゃんだけしかいらないよ…」

「うん…でも、プレゼントありがとう!」


えへへ、と頬を緩める勘ちゃんはとても嬉しそうで、それに私も笑みを溢した。




********


ヤキモチ心配症勘ちゃん。
三郎は良い幼馴染です。
この後二人で仲良く帰りましたとさー


2011/12/25



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