RKRN 5年

□いい
1ページ/1ページ




「好きなんですあなたのことが。」


「三…郎…」



「だから、いいですよね?」



ん?



「え?ちょ、ちょっと待って三郎…!!」

「無理。待てない」


三郎の顔がどんどん近付いてくる。


「えぇ!?いや、マジ、ちょっ、待…!!」



ガラッ!!



「お疲れさまで…えぇえぇ?!」

「どうしたの兵助…あー!?三郎が千雪先輩襲ってる!!」

「「なんだって?!」」


勢いよく襖が開いたと思ったら、他の4人が立っていた。


え?もう授業終わったんだ?良かったー…



って、良くない。

非常にまずいよね、私と三郎の体勢。


「三郎…何してるの?」


素晴らしい笑顔を貼りつけた雷蔵がべりっと三郎を剥がす。

体が自由になったので、私は慌てて起き上がる。


「先輩!!大丈夫ですか?!」

「三郎に変なことされませんでした?」


ハチと兵助が駆け寄ってくる。


「三郎…見損なったよ。」


雷蔵があまりにも素晴らしい笑顔で三郎を正座させてるのに気がつき、私は焦って弁解すす。


「ら、雷蔵、誤解しないで?三郎はまだ何もしてないから!」

「先輩?今から何かされるところだったんですよ?」


はい、ごもっともです。

ヤバイ、雷蔵様、黒いよ!!怖いよ!!


「三郎…お前教室にいないと思ったら、先輩と一緒だったんだな。ずるい。」

「え?勘ちゃん、なんか論点違うくない?」

「えー?俺も先輩と一緒にお菓子食べたかったです。」


お菓子?


ふと足元を見るとさっき三郎がくれたお菓子の空箱が落ちていた。


「あ、そういえば、茶菓子が切れてた。」


思い出したかのように三郎が言う。


「え?本当?買い出しに行かなきゃ…」

「じゃあ、俺買ってきますよ。」


ハチが笑顔でそう言うと、茶室を出ようとした。


「あ、待ってハチ!私も行くから…!」


私も慌てて財布を取り出すと、立ちあがる。


すると、


「先輩が行くなら私も行く!」


と三郎が私の腕を掴んだ。


それを聞くや否や


「俺も行きたい!」
「俺も行きます!」
「僕も行くよ!」


残りのみんなも一斉に立ち上がった。


「えーっと…じゃあ、みんなで行こうか?」

「「「はーい」」」


さっきまで緊張した雰囲気だったのに、今はそんなの少しも感じない。

いつも通りの風景。

子供みたいに笑う後輩たち。

そんな彼らを見ていると私も自然に笑顔になった。


ちょっと前まで、この後輩たちのおかしな言動にあたふたしてたのが信じられないくらい。


「先輩、早く!!」

「あ、うん!」


一年前に比べ大きくたくましくなった彼らの後ろ姿。

私はみんなの元へと足を走らせる。

かわいくて、おもしろくて、大切な後輩たち。

そんな彼らがもう子供ではなく、大人であることを見せつけられた一日だった…。




おかしなこと
サラッ笑顔
言ってみる5題





「ハチ、お前ちゃっかり先輩の隣歩くんじゃねぇよ。」

「うるさいな三郎。って、お前何ちゃっかり手繋いでんだよ!」

「いいなぁ、俺も手繋ぎたいなぁ…」

「俺も繋ぎたーい!!」

「へーん、先輩の右手は私の物だ!」

「三郎…いい加減にしないとサボってたこと先生に言うよ?」



前言撤回。
こいつらはまだまだ子供です。





Fin.


2010/11/1
BACK


 

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ