RKRN 5年
□理性
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「…っていうことがあったの!!」
「へぇーそんな面白いことがあったんですね。」
「全然おもしろくないよ!!…って、ごめん、こんな大声出しちゃって…」
興奮のあまり忘れてたけど、ここは図書の資料室。
一般の生徒は申請しないと入れない図書室の奥にある小部屋で、私と雷蔵以外誰もいないが一応図書室には違いない。
「別にいいですよ。この部屋は防音されてるらしいんで。」
「そう?良かった…」
図書室で騒ごうものなら図書委員長の中在家くんに怒られちゃうところだ。
私は椅子に座り、テーブルに肘をついてほんの数分前に起こったことを思い出す。
あの後…
「兵助のばかやろー!!勘右衛門の裏切り者ー!!三郎の変態―!!」
兵助にチョップを喰らわせた私は、暴言を吐きながら屋上から室内へ駆け込んだ。
「ちょっ…!何で私が変態扱い?!」
三郎がなんかつっこんでたけど、それに応える余裕なんて私にあるはずもなく、私は半泣きで階段を駆け降りた。
そして駆け込んだのはここ、図書室。
資料の整理をするという雷蔵が、ここに案内してくれて静かに話を聞いてくれた。
「それにしても…勘右衛門の意外な趣味に、まさかの兵助の変態発言…。」
いや、勘右衛門の趣味は私が勝手に想像してたのと違ったからびっくりしただけなんだけどね。
でもまさか『脚が見えますしね』とか『露出した方がいいです』とか聞くとは思ってなかったからなぁ…。
しかし、それにもましておかしかったのは兵助!
牛乳を滴らせた私に向かって『良い』だの『興奮しますね』だの…
その上『豆腐なら…なお良い!』だの…!
あいつ、豆腐小僧だとは知ってたけど…まさかあそこまでとは…!!
あぁ、純粋でウブでかわいいと思っていた私の後輩たちが、なんか汚れて見えた。
いや、年頃な彼らをそうやって汚れ無き者としてしか見てなかった私が悪いのだろう…
でも、それにしたって…
うーんうーんと唸っていると、ポンと肩に手が置かれた。
「千雪先輩、あんまり自分を責めないでください。先輩は悪くないですから。」
眉尻を下げながらほほ笑む雷蔵。
「ら、雷蔵…!!」
あぁ、私の癒しのオアシスはまだここにあったんだ…!!
思わず感極まって泣きそうになる。
あぁ、私ってばなんて心の狭い先輩なんだろう…
もっとかわいい後輩であるみんなを理解して寛容な心で導いてあげなくちゃいけないのに、こんな小さいことで泣きごと言って…
「う、うぇーん…雷蔵〜!!」
「わっ!?先輩〜泣かないで、ね?」
私は座ったまま雷蔵のシャツを握りしめ、泣きだしてしまった。
あぁ。言ったそばから…
後輩に泣かせられて、後輩に慰められて…
でも雷蔵の優しさが、優しい掌が、
私の髪を、
心を、
そっと撫でて落ち着かせてくれる。
今だけ…先輩だけど、少し甘えさせて…
そんなことを考えながら静かに泣いていると、
ふうっと小さく雷蔵が息を吐く音が聞こえた。
そして、頭上から雷蔵の優しさにあふれた声、小さな囁きが耳に降ってきた。
「そんなに泣かないでください、理性が保たなくなる。」
To be continued...
2010/09/17
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