ぬらりひょんの孫 半血の継承者

□第4幕
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 大阪城に着くと、上の方から大量の妖気が感じられた。

「……蓮、頼める?」

「お任せを」

 詩翠の言葉に二つ返事で返し、蓮は変化した。体に異様な文様がはいった2メートルはあるであろう白銀の犬に。

「頼むぜ狛犬さんよ!」

「うるさい、さっさと乗れ」

 黒が軽口をたたくと、蓮は少し怒ったように返す。そして、詩翠、黒、咲は蓮の言うとおりに、蓮の背中に跨がった。

「行きます。しっかり掴まっててください」

 そう言うと蓮は大阪城の壁を登りだした。またたくまに最上階に着き、壁をぶち抜き戦闘の真っ只中に乱入した。
 両軍とも何が起きたのか分からず、戦闘を一時中断し、第三者の乱入に目を奪われてしまった。
 華麗に蓮の背中から降り、詩翠は高々と宣言した。

「私の名は詩翠! 一宿一飯の恩義と諸々の私情で奴良組の加勢に来た! だから奴良組の妖怪は私達に攻撃しないでね」

 笠で表情までハッキリと見えないが、笑っているのは誰にでも分かった。
 全員が凍りつき、奴良組の面々は呆気にとられ、羽衣狐一派は蔑む目で詩翠とその後ろの妖怪を見ていた。

「……ハハハハハッ! バカな奴じゃ! しかし、詩翠! おまえ達の"力"もワシに貸してくれ!」

「ま、そのために来たからね」

「面白い……面白い余興じゃ……ここまで魅せる役者も珍しい」

 不敵に笑う羽衣狐には余裕しか見えない。まるで最初から勝負になどなっていない様な笑みだ。

「ワシの女に触んじゃねぇ!!」

 ぬらりひょんが羽衣狐に一直線に向かって行った。



 ぬらりひょんが羽衣狐と戦闘している間も、後ろでも激しい戦闘が繰り広げられていた。
 顔半分に卒塔婆をはめた茨木童子と雪女の『雪麗』が対峙していた。
 雪麗は吹雪を華麗に避けていき、着実にその距離を詰めていく茨木童子に苦戦を強いられている。
 一気に距離を詰められ、茨木童子の剣が雪麗を捉えた。

「くっ!」

 反射的に瞼を閉じてしまった。しかし、次に聞こえてきたのは茨木童子の苛立ちの声だった。
 何が起きたか分からず、目を開けてみると、茨木童子の剣が白い糸に絡めとられていた。

「助太刀するわ」

 優しい声に導かれ右を見ると雪麗の隣にはいつの間にか咲が立っていた。

「まさかあんたに助けられるとはね」

「……小癪な!」

 次はすんなり糸が切られた。すぐさま横薙ぎの一閃で身長がほぼ同じの二人は服をごと下腹部を浅く切られた。深くない傷だが血が垂れた。
 後退しつつ茨木童子の猛攻に二人は避けるので精一杯なのだが、ところどころで茨木童子の剣に捉えられ、傷が増えていく一方だった。
 そして、しまいには壁に背をつけていた。

「終わりだ」

 容赦のない声と共に剣を振るう茨木童子。しかし、その剣はまた空中で動きを止めた。

「なっ!?」

 何が起きたのか分からずただ驚愕の声をあげた。それとは対照的に妖艶に笑う傷だらけの咲の顔が茨木童子の目に映った。
 先程の様に切ろうとしても次は剣だけでなく体が動かない。

「何を……した!」

 むしろ動けば動くほどきつく縛られていくようだ。

「それは私特製の糸、私の体内で作った蜘蛛の糸。そう簡単には抜け出せないわよ」

 また見せられたその妖艶な笑みに茨木童子は苛立ちを覚えた。

「こ……の!」

「雪麗さん、今よ。私の糸を凍らせて」

「え? あ、うん」

 咲に言われるがままに雪麗は"糸"を凍らせていく。すると凍った糸が弾けるように別れ、凍った所が氷の針の様になった。
 後はもう思った通りだった。茨木童子の体を絡めた糸が牙を向き、その体は氷の針で蜂の巣状態になってしまった。

「え、エグイことするわね貴女……」

 雪麗が引き気味で咲を見た。それにまたアノ笑みで咲が返してきた。

「あら? 私がしたのは準備だけ。攻撃したのは雪麗さんよ?」

 私は悪くない。とでも言いたげな表情に雪麗はまた引いていた。
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