ShorT!?

□生徒指導だよ!全員集合!!2
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02.ロイド・アーヴィング




「ひぇー…、涼しいなあ…」



ルークはエアコンから溢れ出る冷気を身体全体で受け止めていた。


つい先日までは温い空気しか出なかった生徒指導室のエアコン。

ルークの愚痴を聞いたガイ(体育教師で親友ポジション)が、パパッと直してくれたのだ。


「なんだか平和だなあ…」



そうルークが呟いた時、生徒指導室にノックの音が響いた。


「失礼します、ルーク先生。」
「あ、リフィル先生。」


入ってきたのは、2年2組担任のリフィル先生。

リフィルは、目に見えて分かるほど怒っている。それはもう、怒っている。

後ろから入ってきたのは、リフィルと目を合わさぬように、視線を逸らすロイド。


「ルーク先生…、この馬鹿を、よろしくお願いしますわね。」

「顔が笑ってませんよ、リフィル先生。」


ふふっ、となんだか寒気がするような笑みを浮かべ、生徒指導室を去っていった。


ロイドは未だに顔を真っ青にし、リフィルが出ていった扉をじっと見つめていた。


「…とりあえず、座ろうか。な?」


その言葉に一回頷き、椅子に座った。

「…リフィル先生、行った?」
「…おう。」


その言葉を聞き、ロイドは深く息を吐く。


「おっかねぇ!!いつもの何倍も鬼みたいだったぜ!!」

「ロイド一体何したんだっつの…」


ルークがそういうと、「ははは…」とロイドは頬をかいた。


「えーっとな、それは…草木も眠る、掃除時間の事だった…」
「眠るわけねーだろ。」

「い、良いから聞いてくれ!」
「わかったよ。」

ロイドは顔を赤くし、ひとつ咳ばらいをした。

「オレは、ほうきで床を掃いてた。
そしたら、コレットがほうきを持っててくれって、オレに渡してきたんだ。
そして、オレはほうきを二本、両手に手にした。」

「なるほど。それで?」


ルークが相槌を打っていると、段々とロイドは楽しそうに語り始めた。


「オレは走って、1組で床を掃いてたクレスに、飛び掛かった!!」
「なんでだよ!!?」

声を荒げるルークを、「しー!」とロイドは宥めると、また語りだす。

(コイツ、何様のつもりだ…)

ルークは小さく溜息をついた。

「しかし、飛び掛かったのには、深い理由があるんだな、これが!」
「深い理由?へー、なになに。」

「それはだな…!

男として、心のゆくままに動いたからなんだぜ!!
両手にほうきがあったら、戦いを挑まないとな!」

「ずいぶんと浅い理由だな、オイ。


…で、その一方的なチャンバラを止めにきたリフィル先生を巻き込んだ、と。」

「何でわかったんだ!?」


「ルーク先生、すげー!」と、目を輝かせるロイドに、ルークは酷く頭痛がした。


(早く、早く終わらせなければ…)



「……掃除サボった罰として、三日間放課後居残り掃除。」

そうルークが言うと、ロイドは「うげっ」と言葉を漏らす。


「放課後居残っちまったら、部活遅れちまうー!」
「そこはクラトス先生にオレから言っておくから。」
「それ目茶苦茶逆効果だって!!」

涙目になるロイドを宥めながら、ルークは話を続けた。

「あと、リフィル先生に1000位謝る。
もうほうきでチャンバラしないって誓う。

この3つでロイド、お前は変われるんだ!」

ルークはロイドの肩を叩き、それっぽく力説する。

少し熱い生徒は、こういう手も使えるから便利だ。と、後にルークは語る。

「変われる…?」
「そうだぜ、もうリフィル先生に怒られる事も無いであろう!!」


ルークのその言葉が効いたのか、ロイドは椅子から勢いよく立ち上がった。

「先生、オレやってみるよ!!

今のオレと、360度変わってみせる!!」
「一回転してどうするよ。」


ルークは思わず突っ込んでしまった。
すかさず咳ばらいをし、勢いでごまかす。

(危ない危ない、ロイドの情熱を冷ましちまうトコだった…!)

「よーし、行ってきます!
先生センキュー!!」

その言葉と同時に、ロイドは生徒指導室から飛び出ていった。
シンと静まり返った生徒指導室。

「終わった、終わった…

いやあ、ロイドほど素直な子は今時いるもんかなあ。」


そう笑いながら椅子に座り、くつろぐ体勢になった瞬間、生徒指導室の扉が勢いよく開いた。
「先生!」
「おわッ!?」

入って来たのは、先程出ていったばかりのロイド。
息を切らしながら、ルークに問い掛けた。


「先生、オレ何するんだっけ!?」



(ああ、この鳥頭)


ルークは痛む頭を抑えながら、渇いた笑みを浮かべた。



 
 

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