鬼行文
□僕と涙と幻の酒。
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夕飯を食べ終わり土方は自室に戻ろうと立ち上がると、既に沖田がいないことに気がついた。もともと広間に長居する人ではないが、何となく先程のことが気になっているのだ。
すると、雪村も気になったのか、
「沖田さん…元気なかったですね」
「俺が知るかよ。」
「そうでしょうか?」
土方は目を見開いた。
雪村が何か沖田の異変に気がついたのだろうか。
「沖田さん、土方さんの事を見て何だか悲しそうな顔をしていた様な気がするんです。」
「っ…気のせいだ。」
雪村を強い言葉で言い聞かせて黙らせた。そして早足で廊下を歩き沖田の部屋を開けた。
そこには。
「その怒った足音は土方さんですか?」
背を向けている沖田。
だが、声にいつもの生意気さがない。沖田が今どんな表情をしているのか彼には分からなかった。
そして、
沖田の肩は小刻みに震えていた。
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