鬼行文

□私と着物と驚異なる殺気。
2ページ/4ページ













「お待たせ千鶴ちゃん!どのお着物がいいかな!?」







「どれも綺麗だから迷っちゃう……」








畳に並べられている数枚の美しい着物。二人が幸せそうに喋っていると水を指す様に、









「取り敢えず全部着てみればいいんじゃないの?」







「……何で殿方がいるのかしら?」






「あれ?ダメ??」







ピリッとした空気が走る。雪村はおどおどした表情だ。なんとなくこの二人は衝突しがいがちだ。多分、千はデリカシーを考えろとでも言いたいのだろう。






「じ、じゃあ私が着てみるから沖田さん見てくれますか?」







「うん。いいよ。」






(千鶴ちゃんは沖田に優しすぎるのよね。)









「そういう事なら、隣の部屋に行っててくれるかしら?」





「はいはい」




















現代のファッションショーのようだった。
雪村は数枚の着物を沖田に着て見せた。沖田の反応はどれもいいんじゃないの、という反応だった。ただ、紅蓮の着物だけ息をのんだ。千は沖田の反応を見て赤の着物にしようと雪村に提案し、







「お千ちゃんが言うならそうしようかな」






「そうしましょ!」






「すごく綺麗だよ、千鶴ちゃん」





「ありがとうございます」






少し照れながら雪村は頭を下げた。千は直ぐにあと片付けに取りかかるので、また沖田を追い出した。



隣の部屋で沖田が溜め息をつくや否や、







「総司……巡察に行くぞ。」






「あれー?もうそんな時間かぁ。」





「俺は先に行ってるぞ。」






「はーい。」






ほんのちょっと斎藤が膨れっ面なのを沖田は見逃さなかった。
斎藤はそれだけ言い残すと部屋を出た。




やっと普段着になった雪村は疲れ顔ひとつせず、千を門まで送りに行くことにした。これから危ない隊務だと云うのに随分とはしゃいでいる二人だが、千は心の中で雪村が元気そうなのを見て半ば安心していたのだ。





.
次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ