鬼行文
□俺と風紀と誓いの場所。
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流石に朝で人が多く満員電車だった。たまたま沖田達が乗っていた車両が他校の学生の体格のいい運動部が一緒に乗っていて人の多さに斎藤は顔を青くした。斎藤は人にもまれながら吊革に掴まることが出来なくてドア付近に流されていった。
「一くん、キツいでしょ?ドアにもたれなよ」
「す、すまない」
沖田はドアに手をつき、斎藤と向き合う形になった。まるで、斎藤を守るように。斎藤は自分より少し背の高い沖田に心臓が跳ねた。目をそらしながら必死に目的地まで着くのを待っていると、
「一くん、さっきの続きしない?」
「するわけないだろう。」
斎藤は沖田の誘いを断った。
こういうのはキッパリと断るのが筋だ。
斎藤は呆れた目で沖田を見ると、膨れっ面の青年が。
(可愛くないなぁ…。別にどうでもいいけど)
沖田はどうしても斎藤に何かしたいらしい。そして何か考えているらしい。斎藤は何かたくらんでいるという事はお見通しだ。
と、斎藤が沖田を睨み付けると斎藤達の反対側のドアが開き、ただでさえ満員なのに更に人が入ってきた。沖田との距離がよりいっそう近くなった。互いの唇の距離はまさに目と鼻の先だ。
「今ならバレないけど?」
「総司、お前やったら許さないぞ」
「許してもらわなくてもいいよ。」
「何を、っ!!」
電車の走る音、学生の喋る声。
今の二人には何も聞こえないであろう。
触れる唇と沖田の息がかかる。夏服の沖田の首筋から一筋の汗が流れ思わず息を飲んだ。誰かに見られてたらどうするんだ、とか考えていると沖田の大きい手が胸元をまさぐっていた。
「僕は別にかまわないんだよ?」
「んっ……やめ、」
「強情だなぁ。じゃあコッチは?」
沖田は斎藤の胸元にあった手を下腹部に押し当てた。斎藤達が降りる駅はあと二つ。それまでの辛抱だが………
「おいっ、総司…」
「何?」
「風紀委員の名においてお前を潰すぞ」
「うわぁ怖い怖い。」
それでも沖田の手は止まらなかった。斎藤は声を我慢するのに精一杯で思わず目を閉じた。
だが────
〜♪プシュー
「あーあ、着いちゃった。降りよ?」
「…………(ポカーン)」
電車を降りても、斎藤の体の熱が冷めることはなかった。
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