鬼行文
□俺と総司と隠し事。
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「僕が明日、死ぬとしたらどうしますか?」
「偉ェ唐突だな。そうだな……」
横に座る沖田の顎を手でこちらを向かせた。
そして触れるだけの口づけをする。沖田は驚いて目を見開き、再度土方を見た。でも直ぐに笑顔になった。
「………あははははっ!!」
「な、何笑っていやがる!?」
「いやぁ。すごく積極的ですね」
「俺はただ、……」
「ただ?」
“愛してるって事を伝えるだけだ。”
土方はそう言うとプイッと前を向いてしまった。
沖田は土方からの言葉を聞いて数秒間動けず、瞳を輝かせた。
「本当に不器用ですね。」
「うるせェ」
沖田は立ち上がると、廊下の方へと歩いていった。
別に止めはしない。沖田と土方はそういうものだから。
(アイツは俺を認めてんのか…?)
「総司っ!!お前ェ何か隠してねェか!!?」
「なんですか急に…」
沖田は立ったまま庭の松の木を見つめた。その姿が土方は恐ろしく不安にさせた。また黒い影が沖田を連れていきそうな気がして土方はますます顔を青くした。
「お前ェ、最近…変だぞ。」
「何も変じゃないですよ。」
「…………」
「全く、これだから土方さんは。心配しすぎですよ」
にっこりと微笑む沖田から黒いが消えていた。幻覚なのか違うのかは定かではない。が、沖田に何かが起きていることは確かな気がした。沖田が一歩踏み出したとき、
「副長。松本先生がおみえです。」
「松本先生か…わかった、今行く」
隊士たちの“健康診断”が終わり、今日は怪我人の部屋の事を相談する予定があったのだ。
これには雪村にも来てもらう必要があり、これからの新撰組にも必要な事だ。
「そう、じ……」
振り返るともう沖田はもういなかった。
(心配しすぎ、だよな……?)
土方は顔を引き締め斎藤と共に松本先生の待つ部屋へと向かった
だが、どうしても手の震えが止まらない。
痙攣などの症状なのか、それとも、
大切なものを失う怖さなのか。
end.→おまけ。(沖田に何かが)