鬼行文

□俺と総司と隠し事。
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「空が青いなー」




「青くない」




「冷茶が美味いなっ」




「美味しくない」




「蝉が鳴いてるな!」





「鳴いてない」





夏が真っ盛りな昼。
蝉の鳴く声がけたたたましく鳴いている。
沖田と藤堂は縁側に座り会話しているのだが、どうも今日の沖田の様子がおかしい。一度もこちらを見ようともせず、ずっと遠くを見ている。彼が何を考えているのかは誰も分からない。



分からない、のだ。






「総司どうしたんだよ?」




「どうもしてない」




「ハァ……」




このような応答しかしてこないので、藤堂はため息をついた。
怒ってる訳では無く、悲しい訳では無い。
藤堂は先ほど沖田が青くないと言った空を眺めていると、





「お前ェらなにしてんだよ」




「!…土方さん」



「………………」



後ろを振り向くと意外な人物がいた。
新撰組の鬼副長、土方歳三だ。
彼は夏の風に長い黒髪を振り乱しこちらを睨んでいる。
きっと仕事をサボっているのではないかと疑われているか自分の総司をとられるのでは、という心配だろう。




「平助、お前ェ巡察は?」



「無いけど…」



「(チッ)だったらどこか散歩してこい」




「何その鬱陶しい感じ!?」




「いいからっ!!」




土方に圧倒され藤堂は、そそくさとどこかへ消えた。沖田はずっと夏の暑さで出来た陽炎を見つめている。土方は立ったまま沖田の後ろ姿を見ていたら何だか黒い影の様な物が見え、土方は自分の目を疑った。沖田に何かが取り付いている様な恐怖だった。




沖田はやっとこちらを振り返り、


「そんなとこ突っ立ってないで、座って下さいよ」



「おぉ……」




土方は沖田のとなりに腰かけた。


(何だったんだ……さっきのは………)




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