桜ノ少女

□第13話
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悠南が神威に連絡を取っていた、その頃。

真選組では、沖田と土方が強ばった表情で悠南の部屋に立ち尽くしていた。
沖田の手には、握りつぶされてぐしゃぐしゃになった辞表があった。

「……何が、あったんだ」
「……分かりやせん」
「夏風は、何を考えているんだ……?」

消えた少女。
謎に満ちたその瞳は、いつも土方の中の何かをざわめかせる。

「本当に自分の意思で出ていったのか…?」

何かを見落としているような気がした。
その違和感の正体が分からず、眉を寄せる。
考え込んだ土方の横で、沖田は悠南の言葉を思い出していた。

『夜兎は危険。……神楽に聞いてみなさいな。吉原で、何があったのか』

……――吉原?

吉原は確か、元宇宙海賊春雨の鳳仙が支配していたが、何ヶ月か前に死んだと聞いた。
そして、その鳳仙は――夜兎。

吉原、夜兎、そして春雨。
吉原の今の支配者も、確か春雨の者だったはず。

何かがカチリと嵌った気がした。

けれどそれは嫌な予感と共に感じて沖田は唇を噛み締めた。

(考え過ぎか……?)

だが、彼女はどうやって吉原の情報を手に入れたのか。
何があったかなど、詳しいことは真選組も知らないというのに。
その場にいたか、関係者に聞かなければ分からないはずで――。

(チャイナと百合は、百合が刺された時以来会ってないはずでィ……)

それと、眠りにつく寸前に聞こえた、微かな声。

『……さようなら、沖田さん』



ドクッと心臓が音をたてた。

「土方、さん……」
「……っ何だ?」
「ちょっくら万事屋まで行ってきまさァ」
「はあ?」

背を向けた沖田の後を、土方が追ってくる。

「何しに行くんだ?」
「ちょいと気になることがありやしてねィ」
「ほー。俺も行くか」

沖田の声音と雰囲気に何かを察したのか、土方が眉を上げる。
煙草に火をつけ、吸い出した彼を一瞥すると、沖田は歩を進ませながら言った。

「土方さん、仕事はいいんですかィ。書類すげェ溜まってやしたけど」
「いーんだよ!大体アレはテメェが問題起こすから溜まってくんだよ!」
「へー。せいぜい頑張って下せェ」

人事のように言う青年に罵倒を飛ばしながら、土方は車のキーを投げた。

「お前が運転しろよ」
「ヘイヘイ」
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